予算がなくても最後のお別れは大好きな生花で、それとも千羽鶴にする?

 少し前までは祭壇と言えば白木の祭壇が殆どでしたが、最近は逆転して生花で飾る花祭壇が主流になってきました。
 しかし、白木祭壇に比べ、花祭壇はまだまだ割高です。
 白木祭壇がレンタル料に比べ、花祭壇は1から創り、お花の材料費・デザイン料その他諸々掛かります。
 葬儀社の担当者の方も色々知恵を絞り、予算がないがどうしてもお花で柩を飾りたいと言うご喪家の要望にあわせ、祭壇ではなく、柩の周りにお花を置く感じにしたり、鉢植えを置いたりして対応することもあります。
 生花にこだわる方には例えば、1基1万5千円の供花を4基出していただき、6万円の予算で柩の周りにお花を置く場合もあります。
 また、故人の大好きだった胡蝶ランで祭壇を飾りたいが予算がないと言う要望には、一鉢50本もある胡蝶ラン二鉢をメインに飾ることで豪華に演出でき、満足頂いた例もあるようです。
 
 一方、花祭壇でも生花ではなく、造花の場合もあります。白木祭壇にレンタルがあれば花祭壇にもレンタルがあってもよいのではないかと提案し、造花でボリュームのある花祭壇を提供している自社斎場所有の葬儀社さんもいらっしゃいます。
 造花と聞くと先入観からか、ちょっと怯んでしまいますが、実際はほとんど見分けがつきません。と言うよりも言われるまでは見た目分からず、これで生花の何分の一と聞かされると生花信仰も揺らいでしまう位です。
 柩に入れるお花は供花のお花をちぎりますので会葬者は最後まで気がつかないようです。

 更に供花もない場合、お花の代わりに折鶴を柩に入れている葬儀社さんもいらっしゃいました。
 お好みの色の折鶴を柩一杯に入れ、小さなお孫さん達にも大変喜ばれているようでした。
 担当者によれば「近頃通夜にいらっしゃる方が増え、明日来れないから今日お別れしたいという方達の為にお花が切れないので代わりに折鶴をお渡ししたのがきっかけです」とのこと。
 1回に200羽近くの折鶴はカラフルなお花にも負けない位のインパクトだそうです。
  
  

斎場の間口と祭壇との関係

 概算の見積りを取る段階でおおよその予算から祭壇が提示されますが、見積りの費用を大きく左右するのがこの祭壇です。
 葬儀社の担当者は色々な価格帯の白木祭壇、生花祭壇の写真を用意し、依頼者にお見せします。
 生花祭壇の写真の場合は色や形は分かりやすいのですが、特に大きさが掴みにくく折角のお花が生きてこない場合が間々あるようです。
 斎場も間口の広さと式場の大きさに必ずしも一致せず、どちらかといえば家族葬向きの斎場でも間口3間以上もあることもあります。
 その斎場に精通している担当者でも特に依頼者のご要望でシンプルな祭壇をご希望され両サイドの供花の並べ方でバランスをとるのに苦労したケースもあるようです。
 勿論横長な生花祭壇をご用意している葬儀社もあります。

 以前立会いに伺った斎場では担当者に会うなり「市営斎場ではこれと同じ生花祭壇が大きく見栄えがよかったのですが」と言われ、依頼者も「もう少し大きな祭壇にしておけばよかったかも」と少し浮ぬ顔の様子でした。
 この場合ご家族ご親族のみ10数名の会葬者でしたが、交通に便利な所と日程が最優先されたため社葬もできるくらいの大きな斎場で執り行うことになり、式場も間口が広くなんとなく、ポツンとした印象を受けました。
  
 同じような間口の広い斎場での印象的な生花祭壇の場合は、横長の花祭壇に緩やかなカーブのラインを入れ、それが鮮やかなアクセントになっていました。生花祭壇に供花を組み込み式にして華やかさを出し、このライン創りは華やかな割りにはお花もそんなにいらないというメリットがあるようです。
 せっかくのお花を生かすも殺すも祭壇と式場とのバランスが大きく影響されるようです。
 

 
 

花祭壇は式場の祭壇間口に左右される

 式場の中には大きさに比べ、間口が広くとられているところもあります。
 葬儀社から渡された祭壇のサンプル写真だけを見て祭壇を決めると、両脇が開いたちょっと間の抜けた祭壇になってしまう可能性がありますので、注意が必要です。事実、間口の広さによってかなり左右されてしまうようです。
 最近立ち会った葬儀の斎場の中にも祭壇スペースが横長にとられているものが目につきました。
 一つはご喪家の意向で式を急がれ、駅の近くなら何処でもということで押さえた斎場は社葬まで出来る大型式場。お花もサンプルの中から選びましたが、少々こじんまりしたものになってしまいました。
 葬儀社の担当者はしきりに他の会場では大きく見映えがする作品なんですがと強調されていました。
 依頼者の方ももう少し高いのでもよかったかしらとおっしゃっていたようです。
 
 一つはご遺体を4日後にご自宅から搬送され、ゆっくりと打合せが出来、式場の横長サイズに合わせ見映えの良い祭壇になりました。
 こちらも最初の見積りの段階では家族葬用のこじんまりした祭壇でしたが、依頼者が写真を見て、もう1ランク上の祭壇を希望され、それでも両横が少しさびしい感じがしたので、葬儀社の担当者は供花が10基以上出ると祭壇に組み込み式のやり方もあることをアドバイスしたそうです。
 最終的には19本の供花が出され、祭壇に組み込まれ、華麗なイメージを出すことが出来ました。ご希望のブルーを基調の洋花の中で、菊を使いラインを強調しより横長なイメージを出したようです。

花祭壇あれこれ

 仏式の祭壇には大きく分けて白木祭壇と生花で飾る花祭壇があります。
 近年特に使いまわしされる白木祭壇よりも、柩に手向けてその都度使いきってしまう花祭壇の希望者が増えてきているようです。
 お花の値段も一頃に比べ安価になり、価格破壊とまではいかなくても、かなりリーズナブルなものも出てきています。
 通常、葬儀社の担当者は依頼者に祭壇のパンフレット、アルバム等をお見せしておおよその感じをつかみ、花の種類、色、デザイン等の具体的なご要望を伺い、後は花屋さんにお任せするようです。
 ご要望の中には季節はずれのお花で取り寄せるのに時間が掛かったりあちこち探し回ったりと時間ぎりぎりまで担当者は悪戦苦闘することもあると聞きます。   
 昨年立会いに伺った中にも、時には故人の趣味を伺いスキーの雪山をイメージした祭壇創りをしたり、またご喪家がお花の師範の場合には八分通り仕上げたところで、最後をご喪家にお任せして大変感激されたこともありました。
 また、担当者の花の管理も重要です。特に正面にある百合の花などは通夜にはまだ少し蕾の状態で葬儀・告別式に咲くように室温調節をしたり、喪主花は家に持って帰るので他の花と違ってわざと蕾のものにするなどの気配りが必要になってくるようです。
 先日伺った葬儀社の担当者は「10年前花祭壇が一般的に出始めた頃は毎回花屋さんサイドとイメージの差が出て喧々諤々と大変でしたよ。今では隔世の感がありますよ」と感慨深げでした。