遺影

 このところ、歌舞伎界を初め、著名人の現役世代の訃報が相次ぎ、ファンならずとも同時代を生きた人達の感慨もひとしおのようです。

 久しぶりの旧友との話題も、お元気な頃の活躍ぶりを思い出し、話の種は尽きませんが、テレビに映し出された遺影を見ていると、一枚の写真に託された気持ちがファンの心に焼付いて、これからもずっと語り継がれていくのではと心強い思いが伝わってくるように感じられました。
 遺影の力は大きいです。

 ご葬儀立会いの節には遺影と必ず一期一会のご対面となりますが、皆様著名人に負けず劣らず、飛び切りの笑顔で最後のお別れをされていらっしゃいます。

 先日も笑顔の素敵な遺影との出会いがありました。
 正装をして写真館で撮ったむりやりの笑顔と違い、同じ正装姿でもあまりに自然な笑顔に、しばらく見入ってしまうほどでした。
 聞けば、息子さんの結婚式の時の写真とか。
 本来ならば、うれしさが溢れている笑顔に、思わず“おめでとう”と声を掛けてしまいそうな写真です。

 しかしながら、当時この笑顔がご自身の遺影になるとは露ほども思わなかったでしょうに・・・。
 それを思うと、60代の若さで亡くなられた無念さが笑顔と二重写しになり、しばしかける言葉も見つかりません。
 それでも、お母様は毅然と微笑んでいます。
 お母様は後に残したご家族に悲しみを見せないように、思い切りの笑顔を見せて旅立たれたように思われます。
 遺影の力は偉大です。

会葬者数を調べるには・・・。

1ヶ月ほど前の新聞の投書欄に、過去数十年の年賀状をひと思いに「燃えるごみ」に出してしまい、中には結婚される前の奥様や生前のお母様をはじめ、大切な方からのものもあり、今では後悔していらっしゃるとの投書が載っていました。

 今更ながら保存方法を考えると、どれを捨て、どれを残していくかを選択し、大切な方の分だけに絞って、名前のあいうえお順にクリアファイルに整理しておけば、いずれ亡くなった時には子供達がファイルを見れば、親の交友関係の一端を知ることが出来るのでは、とありましたが、まさにこれはご葬儀の時にも当てはまる、重要な要素になります。

 ご葬儀での会葬者数の予測を立てる場合に、よく故人様の年賀状の枚数等が引き合いに出されますが、儀礼的な年賀状も多くあり、ご家族が正確な数を読み込むことは難しいようです。
 その点、ご自身で整理されたものがあれば、正確を期することができ、まさに鬼に金棒です。

 ご葬儀では会葬者の人数が分かれば、お食事や返礼品などの他に、場所の設定等の大方のことが決められますが、時としてつかみにくく、ご喪家の方から伺った色々なお話の中から葬儀担当者はある程度の予測を立てながら、当日を迎えることになります。
 おおよその予測範囲内であれば問題はありませんが、時には予想を裏切り、大勢の方々がお見えになったご葬儀に立ち会ったこともありました。

 ご家族・ご親族のみの家族葬のはずでしたが、メール等の伝達手段の発達で、お仕事仲間にご葬儀の情報があっという間に広がり、とるものもとりあえず駆けつけた人達で狭い式場が埋まって、身動きできない程になってしまいました。
 フリーでお仕事をされていらっしゃったので、ご家族は仕事仲間の把握ができなく、予測不可能な状態でしたが、ベテランの担当者の計らいで、駆けつけた方々に故人様とのご対面時間を設け、その分通夜のお清め時間を短くするなど、臨機応変な対応でなんとか事なきを得ました。

 自分のことは自分で・・・。エンディングノートとともに。
 思い立ったが吉日、今年届いた年賀状から早速始めてみましょう。

アンケート

前略
 本日、母の1周忌法要を執り行いました。
 母と旅行に出かけた日のこと、母が倒れたときのこと、あさがおさんに初めて連絡させて頂いたときのこと、通夜告別式のことなど、ここ最近十日ほどの間、毎日「1年前の今日は・・・」とおもいだすことが色々とあり、いまだに目頭が熱くなります。

 ご同行されたお母様が北陸の地で倒れられ、帰らぬ人となられてしまわれた方から丁度1年後にいただいたアンケートの前文です。

 当センターではご葬儀が終わり、皆様のお気持ちが少し落ち着かれた頃を見計らい、ご依頼を頂いた方にアンケートのお願いをさせていただいております。
 アンケートの内容はセンター、葬儀社、斎場に関するご質問ですが、忌憚のない意見をお聞かせいただくことで、至らなかった点を反省すると同時に、センターにとり更なる発展をする上での重要なヒントを与えられたことにもなります。
 お褒めのお言葉に勇気を与えられ、素直に喜んでおりますが、それ以上にその時お感じになられた率直なご意見に教えられることも度々です。

 また、ご葬儀という特殊事情からお答えいただける時期も各人のお気持ちにより様々で、中には上記のように、1周忌を区切りにご回答される方もいらっしゃいます。
 時期を選ばず、お感じになられたことを率直にお書きいただければ結構ですので、今後ともよろしくお願いいたします。

 現在、様々な分野でアンケートは行われておりますが、有効に活用されているのはどの位でしょうか。

 以前、アンケートを大事にされているダンススクールの先生からアンケートの効用についてお話をお伺いしたことがありました。
 スクールではスタジオでのパフォーマンスとして、生徒さん達が観客の前で各人の作品を発表した後、お客様にいつもアンケートをお願いされているとのこと。
 アンケートの結果を見て自分の意としたことがうまく伝わらなくて落ち込む生徒もいますが、そこが大事で、うまくいかなかったことがチャンスだ。失敗を考えることで自分というものが見つかってくると力説されていらっしゃいました。
 アンケートの活用法も様々あるようです。

ご縁続きで・・・。

 ご葬儀では、様々なご縁に出会います。

 ご縁を大切にしていただいて、以前のご葬儀の時にお世話になった葬儀社さんに、今回もお願いしたいとの問い合わせを時々いただきます。

 先日も7年ほど前、当方がご紹介した葬儀社さんにご葬儀を依頼された方から、真夜中にお電話がありました。
 当時お元気で活躍されていらっしゃったお母様の急なご不幸のお知らせと、以前と同じ葬儀社さんへのご依頼でした。
 毎年年賀状をいただいておりましたので、お名前をお聞きすると同時に、立会いにお伺いした当時のことが思い出され、前回との比較をお聞きするだけでもご要望のご葬儀全体像が浮かんできました。
 これもご縁の賜物かもしれません。

 また、お身内のご葬儀で霊安室名簿からまったく面識の無い葬儀社に決めて高額な請求をされ、周りにご迷惑をかけてしまった経験から、当ホームページを読まれて一人で悩むよりセンターに相談してみようと決心され、お父様のご相談をされた方から「何かのご縁であさがおさんとご紹介の葬儀社さんと知り合えて、家族として立派な式ができたことに感謝しております。これもまじめだけが取り柄(たばことお酒では苦労しましたが)の父の日ごろの行いがよかったからかね!?と母と話しております」と葬儀後にお便りをいただいたこともありました。

 「母はこういう葬儀がしたかったんです。ありがとうございました」
 本日、立会いにお伺いしたご喪家のご主人は、センターがご紹介した葬儀社さんにお決めになった理由を、担当者の方がご遺族の気持ちを汲み取って、終始ご喪家の立場に立った提案やアドバイスをされたことにあると語ってくださいました。
 他数社の担当者の方が自社のプランの説明に終始していらしたところに違いがあるとのこと。
 お父様を静かにお身内だけでお見送りしたいというお母様のイメージしたとおりのご葬儀ができましたと、大変喜んでいただけたようです。
全面的な信頼を寄せていただき、これを機会に新たなご縁が生まれる予感も致します。

思い出コーナーは自主参加型で・・・。

 昨年末、鎌倉で催された日本初のバレエスクールの回顧展に足を運んだ折、主催者からコーナーの一角にお弟子さんや関係者から送られたスナップ写真を展示し、これが大きな反響を呼んでいるとのお話を伺いました。

 ロシア革命から逃れ、日本に亡命されロシア時代に培ったバレエを紹介し、昭和の初め、鎌倉・七里ガ浜の地にバレエスクールを開設し、多くのお弟子さんに慕われたパヴロバ一家の回顧展には当時のスナップ写真が集められ、開催中は連日大いなる賑わいを見せていました。

 鎌倉には孫弟子まで含めると、現在も多くの関係者が在住しており、皆さんがご自身のアルバムに大切に保管されていたスナップ写真は当時を思い出させ、お互いにお話が弾み、まさに会場は同窓会の趣を呈するほどだったとの由。
 気楽に撮られたスナップ写真だからこそ、思い出の糸口も広がり、大いに盛り上がりを見せたようです。

 一方、ご葬儀を施行する葬儀社さんもサービスの一環として、最近では式場の一角に思い出コーナーを設け、お元気な頃ご家族ご一緒に撮られたスナップ写真をご会葬の方々にお見せする社が多く見受けられるようになりました。
 しかし、時として急場しのぎ的な展示の仕方が目につき、ご会葬の方々の反応も今ひとつ盛り上がりに欠ける場面に出くわすこともあります。
 当然、写真の良し悪しだけではなく、ご喪家の展示する写真に対する思い入れやその写真にご会葬の方々との接点がどの位あるかで、かなり違ったものになるようです。

 以前、お身内を中心とする葬儀はできるだけ家族参加型を提案されている担当者のご葬儀に伺った折に、喪主の方から大いに感謝されたことがありました。

 「思い出コーナーはお孫さん達の手作りで」と担当者から提案され、賛成はしてみたものの色々と心配でしたが、お孫さん達からは写真を張ったり,レイアウトしたり,飾りつけをしたりとおじい様への最後のプレゼントを皆で気持ちをひとつにして完成させ、よき思い出になりましたと感謝され、出来上がった作品を見て感慨もひとしおだったとのことでした。

 また、下町で踊りのお師匠さんをされていらっしゃった方の場合は、「ご会葬者の多くが踊り関係の方々で、踊りのビデオをお見せしたい」とのご要望でしたので、葬儀社さんがビデオの持ち込みをサービスとしてご用意し、大変喜ばれ、コーナーは常に黒山の人だかりで、中には1日中でも観ていたいという方もあらわれてくるほどの反響がありました。

たかが風邪、されど風邪、気をつけましょう。

 寒中お見舞い申し上げます。

 昨年喪中の友人からは近況報告を兼ね、風邪のため寝正月になってしまったとの寒中見舞いはがきが届きました。
 今年も風邪が猛威をふるっているようです。

 私も帰省の折りの新幹線車中では前後左右から咳やくしゃみの大合唱に見舞われ、慌ててポケットからマスクを取り出し、守勢にこれつとめましたが、次第に風邪引きの仲間入りを果たしたような気分に陥り、新年早々大慌てをしてしまいました。
 なにしろ帰省の第1目的が姪の赤ちゃんの写真を撮ることでしたので。

 そんなこんなで、私の仕事始めは1月4日からでしたが、早速に頂いたお電話もお亡くなりになられた直後でのご相談や、メールでのご相談を始めた矢先にお亡くなりになられ、急遽お電話でのご相談に切り替えたような、急変されたケースが相次ぎました。
 
 ご紹介した葬儀社さんからは「火葬場併設の斎場は特に混み合っており、すでに今の時点で10日間ほど待ちいただくことになる」との報告も受けました。
 正月三ヶ日がお休みの火葬場は例年になく混み合っていたようです。

 昔から寒いときには老人や幼児の死亡率が高くなり、その死亡原因の第1は肺炎であるとも言われています。
 ご病気で体力が消耗されておられるご老人、免疫力が落ちているご老人や赤ちゃんの風邪は肺炎に掛かりやすく、油断大敵です。
 また心不全などの持病をお持ちの方も風邪を引いたのが原因で一気に悪化させることもあると聞きました。

 この時期の新聞の訃報欄に書かれている病名も肺炎と心不全が目につきます。
 寒さはこれからが本番です。
 寒さに負けない体力作り、これも今年の目標の一つです。

 追伸
 先日、早速バー・オ・ソルで2時間ほど汗をかいてきました。

新しい年を迎えて

 新年明けまして
 おめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 早いもので、当センターも今年で設立9年目を迎えます。
 昔から1年の計は元旦にありと言われておりますが、刻々と移り変わる業界の中で当センターはNPO組織であることをかたくなまでに守りながら、いかにしたらご相談いただいた皆様一人ひとりのご要望にそえられるかを目標に、今年もスタッフ一同試行錯誤しながらマイペースでまい進していくつもりです。

 当センターでは設立当初から、ご依頼者の方々にご葬儀終了後アンケートをお願いしておりますが、新しい年の計画を模索する中で、このアンケートが重要な役割の一端を担うこともしばしばあります。

 年末になると今年のみならず、過去のアンケートも合わせて読み返す機会も増え、合わせて読み返すと次なるステップへのヒントに繋がるようです。
 さらに過去のアンケートも少し寝かせて改めて読み返すと、予想以上の力が発揮されるように感じられます。

 一昨年前までのアンケート調査の冒頭ではセンターをご利用の経緯を出来るだけ具体的にお書きいただいておりました。
 インターネットで探している内にご希望の条件に合致した方など、経緯は様々ですが、総合満点度10をお書きいただいた方からは
 ①居住地に多少とも知り合いの葬儀社がいなかったこと。
 ②家族の希望で会葬者が最小限のできるだけシンプルな葬儀を希望だったこと。
 ③会社の福利厚生関連の葬儀社は全てパックの葬儀プランだったこと。
 ④なかなか打ち合わせにくい金銭面こそ重要とホームページに記述があったこと等の理由により葬儀社を紹介させていただきたく、連絡させていただきましたとの経緯が記されていました。

 また、同じように満点をいただいた方からはご葬儀について下調べを始めましたが、お母様から「低予算で家族葬」とだけ確認を取られ「インターネットで調べましたが、何を基準に選択するべきか悩み、それがストレスとなるほど途方にくれていた時にセンターのホームページに出会い、私にとってまるで葬儀の百科事典のような存在となって葬儀の流れや注意点を学ぶことができ、しかも必要確認事項をフォーマットに記せば、私に代わって見積りを取ってくれるサービスには助かった」とのこと。
 さらに「担当者には丁寧に対応していただき、同送された手紙にはなぜその葬儀社を勧めるかの理由が細かに記されており、この手紙が一番の安心に繋がった」と詳しい経過もお書きいただきました。

 このようにアンケートに励まされ、叱咤激励をいただく中から、次なる問題点を見つけ出し、我々も新たなステップを踏むことができるのです。

 今年も皆様のダイレクトな声をお伺いしながら、センタースタッフ一同、更なる挑戦を続けて行きたいと存じます。

パニヒダと外国人墓地

 先日の日曜日、ご縁があって横浜の港が見える丘の上にある外人墓地に眠っている白系露人のエリアナ・パブロバさんご一家の墓に詣でてきました。

 普段は塀越しにしか見られない墓地も、土日祝日は維持管理費を捻出する財源となる募金をされると、内部の見学が許可され、横浜の港をめぐるコースのひとつにもなっているようです。

 老若男女を問わず散策に訪れている方々は、様々な形のお墓に魅入られ写真を撮られたり、メモをされたりと、日本のお墓とは一味違うエキゾチズムを堪能されている方が多いように見受けられました。

 パブロバさん一家の墓は木立に囲まれた傾斜地にあり、かつては海も見えたであろうと思われる見晴らしのよい場所に位置し、当日のパニヒダ(死者のための祈り)は小春日和を思わせるような穏やかな日差しの中、ロシア正教の牧師さんが奏でる鈴の音とお祈りに、時折小鳥の声が交じり心休まるひと時でした。

 日本にバレエを広め、その基礎を創ったとも言われているエリアナさんは、大正時代にロシアからハルピンを経由して、母子3人で日本に亡命され活躍されたが、戦時中軍隊慰問の途中で亡くなられ、鎌倉・七里ヶ浜のバレエスクールは妹さんのナデジタさんの手によってその後を受け継がれて、バレエ界に多くの逸材を送り出してきました。

 親子3人がお亡くなりになられて、早30年の月日が流れましたが、いまだにご家族を慕って、毎年行われる追悼にはかつてのお弟子さんを初め、ご父兄の方、ご一家との関わりのあった方々が、お花を手向けにいらっしゃいます。

 周りの様々な形のお墓を見ていると、ひとりひとりの物語が浮かんでくるようです。

 遥か異国の地で永遠の眠りにつかれ、2度と故郷に戻ることもかなわなかった人達が、海が見える丘の上から遠い故郷をどんな想いで見ていらっしゃるのだろうか。
 思わずお声を掛けたくなりそうです。

 師走の中、時間が止まった1日でした。

 本年の私の担当は最後になりました。
 来年もよろしくお願いいたします。
 では、良いお年を!

香典返しについて考える。

 久しぶりに大好きな舞台女優・吉行和子さんの著「老嬢は今日も上機嫌」をめくると、先日お亡くなりになられた小沢昭一さんと句会での出会いがユーモラスに書かれており、お会いした時のことが懐かしく思い出され、思わず先を読んでいくと今度は「香典返しはなくそう」という勇ましい?タイトルが目に飛び込んできました。

 昔の芝居仲間が突然お亡くなりになり、ある日香典返しのカタログが届き、何か味気ないと思いつつもスタンドを注文されたそうですが、この香典返しには前から疑問に思っていらしたとのこと。
 香典返しというものはなくていいのではないかと。

 よく言っていただけました。
 香典返しはご葬儀の後、49日をめどにご香典を頂いた方々に半返しとしてお送りしていましたが、昨今は即日返しという名のもと、ご香典を頂いた日に香典返しに代わるお品をお渡しすることが多くなりました。
 ご葬儀の後の繁雑さを考慮して、大方のご香典はご葬儀終了と共に片付けてしまいたいという思いからでしょうか、これでは本来の意味合いも薄れて形だけのものになりかねません。

 私もご葬儀の立会いに伺い、ご喪家側もご香典を出された方も当然の様に即日返しを受け取ってお帰りになられる型通りの姿に、時に漠とした違和感を覚える時もありました。

 昔からあるご葬儀の慣習だからと言ってしまえばそれまでですが、都会ではすでに昔からの村落共同体の意味合いも無く、どこかで断ち切る必要もあるのではないかとの思いがいたします。
 今の時代にふさわしいご葬儀の仕方として、親しかった方々のみでのお見送りが多くなってきておりますが、香典返しだけは相変わらず続いております。
 
 吉行さんは「香典返しはもっと有効に使おうではないか」と提案をされています。
 頂いたご香典はご葬儀に使われた費用の一部にご喪家がお使いいただいてもよし、余裕があればしかるべきところにご寄付されたらいかがでしょうか。
 それで幸せになる人がいれば、その方がよほどよいとおっしゃっています。
 私も同感です。

保留の理由

 「お手配まで進めていただいているところではございますが、しばらくペンディング(保留)ということで、ご了解いただければ幸いです」
 新年早々に、上記のメールをいただき、ホッといたしました。

 通常のビジネス用語としては、かなり否定的なニュアンスをもたらす言葉ですが、ご葬儀の進行状態の中では、うれしいニュアンスも込められています。

 昨年の5月に最初の事前相談をいただき、メールのやり取りで見積りをお取りし、ご検討いただいているご相談者からの久しぶりのご連絡でした。

 この前にご連絡を頂いたのはお見積りをお渡しした1ヶ月ほど後のことでした。
 お悪かったお母様の病状が回復の兆しを見せ始めたので、「将来、そういう場合が参りましたら、その際にはあらためてご連絡をして、打ち合わせた通りに進めさせていただきたい」旨ご連絡を頂いてから半年。
 ずっと小康状態を保っていらっしゃるとのこと。
 もうしばらくはこのままかと思われていらっしゃるご様子に、思わず今は出来るだけお母様とのお時間をお取りいただくようこちらからも改めてご伝言申し上げた次第でした。

 ペンディング宣言から8ヶ月、残暑厳しい最中、メールをいただきました。
 お母様のご様子が思わしくなく、「以前の見積り内容は今でも有効ですか」とのお問い合わせに、「大丈夫」との葬儀社の担当者の言葉をつなぐ間もなく、ご逝去の報が入りました。
 ご病状を伺ってから1年4ヶ月よく頑張りましたね。
 いつの間にか、こちらも身内の不幸に出会ったような気持ちになっていました。

 事前のご相談を伺っていると、途中から対象者の方の病状が快復に向かい、ご相談者からペンディングをご希望されるケースに出会うことがたびたびありました。
 私たちは「いのち」に一喜一憂しています。
 どんなに先延ばしされ、保留されても動じないのも「いのち」です。
 時として「いのち」の不思議を感じます。