式場の良さは現場の声が届いているか否かで決まる

 市民優先という枠があるものの、寒い季節にとって公営斎場での式場予約は混み合い、ご葬儀まで1週間近く待たされる日もでてきますが、それでも依然として人気は高いようです。

 火葬場併設のため出棺後車での移動がなく、式場費も民間に比べリーズナブルなお値段でのご葬儀は、今後益々注目されるのではと思われます。
 式場の事前見学にお見えになる方も、荘厳なイメージの式場や広いロビーを見て安心してお帰りになられることと思いますが、関係者からの説明を受けただけでは気が付かないことも出てきます。

 その代表格として取り上げられるのが騒音問題です。
 実際にご葬儀をされ、初めて気付かれる方も多いようです。
 横並びの式場は大型葬儀にも対応可能なようにスライディングウォールで仕切っただけのところが多く、斎場サイドもお隣とのご葬儀時間差を設けたり、マイク使用を禁じたりと、騒音対策を打っていますが、そのつど注意を促すまでには至っていないのが現状と見受けられます。

 音響効果がよい式場内でのこと、静粛なご葬儀中お隣から洩れ聞こえる雑音は大変気になります。
 ご葬儀が終った安堵感からか、ご会葬者の一段とハイテンションのおしゃべりが筒抜けになったり、お隣の読経の声がスピーカーで増幅され、こちらの読経がかき消されたり、時にはご葬儀終了後の撤収作業の音まで響き渡り、ご喪家のお気持ちを思うと気が気ではない場面に出くわします。

 先日お伺いした斎場は大・小式場の間にトイレが一ヶ所小式場側にあり、しかも床がフローリングのため、小式場でのご葬儀中、後から大ホールへお見えになったお客様のヒールの靴音が暫しの間響き渡っていました。
「静かにお願いします」の張り紙をご覧になっても、普通に歩いている足音まではなかなか気が付きません。

 式場改修の折はぜひ、葬儀関係者のご意見も参考にお願いできればと思いますが・・・。

ご自身の葬儀をどのようにしたいですか?

 「自分の場合だったらこのようにしたい」とご自分の葬儀をイメージされ、相談される方が増えてきたようです。。
 いざという時慌てないため、残された奥様やお子さん達が混乱しないようにと葬儀のやり方や葬儀社を決めておきたいという思いからかと思います。。
 以前から気になりつつも延び延びになっていたのがインターネットの普及で葬儀に関することが解りやすくなり、決心がついた方が多いようです。
 ご自分の最後をイメージし、決めるのも今が健康だからできることでもあります。
 
 第1条件にこじんまりした葬儀を望む方の場合、家族と近しい親族と親友という本当に別れを惜しんでいただける方のみにきていただきたい。
 これまでに多くの葬儀に参列されたが亡くなられた方とはほとんど面識もなく、ご家族への義理で伺ったことからの反省の意もあるようです。
 参列して頂かなかったお知り合いの方にはしかるべき時点で、ご家族から亡くなった旨をはがきで知らせてもらうようにするとのことです。
 予算、場所、サービスの順序も集まっていただくのは大切な方ばかりですので、まずは何をおいてもサービス第1。
 葬儀社の決め手も、いざという時当の本人はおりませんので、「約束を守り、誠実にやっていただけるところが第1です」とのことです。

 ご自身のいざというとき、遺された家族の大きな不安は少しだけででも小さくなることかと思います。

友人の事前相談

 先日、数人の友人と会う機会があり、楽しくおしゃべりをしていました。
 その会話の中で友人の一人が、「最近、実家の母が少し体調を崩すとお葬式の話をするのよね」と。BR> 「私のお葬式は、この写真使って、この曲をかけてね、それから、遺骨は海に散骨してちょうだい。」と電話をしてくるそうです。

 そのお母様は80歳を過ぎているのですが、毎朝ウォーキングをしたり、テニスを楽しんだりしていてとてもお元気な方。ご自分の葬儀はこうしてほしいという強い思いがあるそうです。

 友人にしてみれば「お葬式にこんな曲かけちゃっていいの?」とか、「お墓があるのに散骨しちゃっていいのかな?」とか…色々と疑問点も出てくるし、現実的に大丈夫なのかと心配したり。

 あいにくお母様は地方に一人暮らしをしているため、私が直接お手伝いすることは難しいかもしれないけれど、幸い、お母様もお元気で、自分から葬儀の話しをしてくれるのだから、一度じっくり話し合ってみて、地元の葬儀社に相談してみるといいかもね、と話しました。

なかなか難しいことですが、私も一度、そのお母様とお会いしてお話をしてみたいな…と思いました。

ご自身の事前相談は映画『エンディングノート」を参考に・・・?

 夏の終り頃、立て続けに60代の方々のご葬儀に立ち会いました。

 これから第二の人生設計をあれこれと思い描いていた矢先に、突然潰されてしまった無念さを思うと、お悔やみの言葉もなかなか見つかりません。

 そんな中、タイトルに惹かれて観た映画「エンディングノート」は、69歳の若さで亡くなられた、かつて熱血営業マンの半年間のドキュメントでした。

 映画は末期癌を告知された父親が家族に残すエンディングノートとして、ご自身の最期までを克明に綴り、それを監督である娘さんが、冷静にかつ絶妙な距離感を持ちながら撮影を進めていました。
 この距離感に私もいつの間にか見ず知らずのご家庭の仲間入りをし、時に口をほころばせ、時に涙で頬をぬらしながらも、ご葬儀のアドバイザーとして大いに頷きながら見入っていました。

 モーレツサラリーマン時代をそのまま続行して、全て段取りをしなくては気がすまない主人公はご自身のご葬儀の準備を始めます。

 ご実家は代々仏式でしたが、宗派を問わないお墓を確認して、キリスト教葬を選びます。
 選んだ理由は式場の雰囲気がよく、ご自宅から近く、リーズナブルであることをあげ、近親者のみで執り行うことを明記し、ご会葬いただきたい方のリストをコピーにまでとって息子さんに最後の段取り確認まで、準備万端整えました。
 94歳になるお母様に携帯電話で最後のお別れをし、洗礼を受けます。

 ラストシーン、ご遺体は見慣れた町をゆっくりと後にし、一路火葬場へと向います。

 昼下がりの映画館は老若男女で埋まり、若いカップルも多く見受けられました。
 ご葬儀の事前相談をご希望の方は是非ご覧下さい。お勧めいたします。

自分らしく…。

 6月の鎌倉駅構内は平日のお昼前にもかかわらず、中高年の特に女性パワーで溢れかえっていました。
 グループのリーダーも圧倒的に女性が占めているようです。

 今の季節、紫陽花と苔むした岩間に咲く岩たばこの花をお目当てに、皆さんこれから鎌倉の散策に繰出そうと、パワー全開です。
 意気揚々とした姿に圧倒されながらも、おこぼれを預かって、こちらも思わずシャキっとしてくるから不思議です。

 時を同じくして災害時における高齢女性の意識と行動の調査を行なっている友人からは「主として70代の女性からお話をお伺いしているが、押し並べて皆さんお元気。災害時にどうして欲しいというのではなく、どうしたいと助ける側の意見が圧倒的だ」とのお話を伺いました。

 また、平均年齢60代半ばの方々とおしゃべりする機会を持った知人は「一番元気が70代の方で、70代はある意味開放され、自分らしく生きているのかも。60代は70代の基礎作りなのでは・・・」と分析しています。

 「自分らしく」の言葉には、時代を生き抜いてきた先輩達の確かな手ごたえが感じられます。

 先日ご葬儀の事前相談で見積りをお送りした方も76歳でお元気なご様子。
 ご自分のことはご自分で、いつの日にかのために息子さん達に託しておき、これからはやりたいことに向って前進あるのみと電話口の力強いお言葉に大きく頷くばかりでした。

その場の空気が読めるか否かで担当者の技量が問われる・・・?

 祭壇の両脇に並ぶ供花は故人をお花で供養する意味合いが込められています。
 ご葬儀の立会いで喪主、子供一同、孫一同とお名前が書かれた札を見ていると、あれこれと故人との関わりが見えるような錯覚に陥ることもあります。
 
 最近では都会を中心にご家族・ご親族の他はごく親しかった友人だけというようなご葬儀が主流になりつつあります。
 そんな折、度々この供花について尋ねられることがあります。
 お花を出せばそれで終わりと思いがちですが、これが結構ややこしい問題を含んでいるようです。
 少し前でしたら、ご親戚の年配者がまずは故人にお花をと、てきぱき処理されことなきを得ていましたが、最近はそれぞれの家庭の事情もあり、切り出し難いこともあるようです。
 
 ご喪家側もご親戚の分はお名前だけをお借りして、一括される方もいらっしゃいますが、うっかりするとお名前を出されたご親戚の中には素直に従いにくく、押し付けがましさを感じる方も出てきます。
 ちょっとしたことが、ボタンの掛け違いで事が大きくなり、後々それがしこりになっては大変です。

 そこでベテランの担当者だったらどうされるか。
 お身内が集まった打ち合わせの時、その場のご喪家の空気を察知しながら、お花はどうされるか透かさずお尋ねするとのこと。
 お集まり頂いた方は納得され、皆さん全員がお集まりいただいているわけではないので出席されているご兄弟から言ってもらうようにする。
 ノウハウだけでは身動き取れないのが葬儀担当者。お会いして、お話を伺いながらご喪家の雰囲気を読み取り、対処していくのが担当者の役目だが、100人100様の対処の仕方があり、一言では言い辛いとのことです。
ローマは1日にしてならず・葬儀担当者も1日にしてならず・・・か?

都内では献体される方とのお別れもままならない・・・?

 少し前まで定員割れをしていた献体希望者が、最近では激増傾向にあり、今や順番待ちの状態との報道を度々耳にするようになりました。
 献体をご本人が希望されていても、直前になってご家族ご親族の方からの反対がでるケースも多々あるとのこと、その為か条件もさらに厳しくなっているようです。

 しかし、都内の方の場合は特にその難関を無事潜り抜けて皆様のお役に立てられるとほっとされる前に立ちはだかるものがあります。
 その一つが斎場探しです。
 都内の火葬場併設の式場はそこで火葬することが前提になっております。
 いきおい自社式場を持たない葬儀社さんは他の貸斎場を探さざるを得ない羽目になります。

 先日も「献体が決まっている都内在住の叔父が万一の時、親族や古くからの友達数人と最後のお別れをしたいがどうすればよいか。叔父には兄弟がいるだけで、ご葬儀は祭壇も要らないのですが・・・」というご相談を受けました。
 病院から直接献体先に運ばれる場合以外は、献体でも通常のご葬儀の形式は同じです。
 出棺先が火葬場か献体先の大学病院かの違いだけですが、問題は予算。
 予算を抑えるためにはまず公営斎場を探しますが、区によって有る所、ない所と様々です。
 伺えば、該当する区にはご親族何方もいらっしゃらないとの由。民営の貸斎場はお値段の点で・・・。
 依頼者は川﨑在住の方。
 それではということで結局東京を断念し、川崎市に自社斎場を所有している賛同社をご紹介させていただきました。
 何でもありの東京ですが、その分制約も色々付いてまわるようです。
 東京からの搬送を考慮しても依頼者のお住まい近くでということになりました。

ご葬儀にも主婦パワーが発揮される時代がやってくる・・・。 

 右を向いても左を向いても不景気風に呑み込まれそうな中で、怖いもの知らずに突き進められる一群がいます。
 そうです。強行突破ができるのは一家の大黒柱のお母さん。
 主婦軍団です。
 最近は様々な場面に顔をのぞかせていますが、ご葬儀の分野でも主婦パワーを発揮される方が出てきています。
 ご葬儀がより儀式化される一方で、家族葬のようにご家族・ご親族のみ、親しい人たちだけの中で日常の延長上として執り行いたい方も多く、それには生活者の目を持った主婦が打って付けなのでは。

 昨年末伺った東京近郊の式場でも取り仕切っているのは、3年前まで専業主婦でしたと言うお母さん。
 以前は田んぼだった土地を遺産相続で宅地にし、跡地を斎場にと思いついたのです。
 というのも周りにはご葬儀をする場所が無く、遠方の公営斎場まで足を運んでいる現状を見ていたことから、倉庫やアパート経営よりもと考えついたのですが、それからが大変だったようです。
 いつの間にか火葬場ができるという噂が先行し、ご近所の大反対にあってしまったが3年がかりで説得し、葬儀社の方々に尋ねながら、使い勝手のよいこだわりの式場を完成させました。
 さらに建てたからには葬儀のことを知らなくてはと葬儀社に手伝いに行き、式場のみならず、いつの間にかご自身も葬儀社を立ち上げてしまわれた。
 まだまだ駆け出しですからとは言え、10年後が楽しみなパワフル母さんです。

矢張り、思い出の家から旅立ちたい・・・。

 ご近所との交流もなく、また義理でお出でいただくのも心苦しいからお身内だけで送りたいと最近では家族葬さらに直葬という形でのお見送りが目立ってきています。
 そんな中「狭い所ですが、できるようでしたら嘗て両親がやっていたお店の土間で葬儀をしたい」とのメールをいただきました。
 但し、祭壇や柩を置く場所を除くと、お見えになる方々がお座りいただくスペースの確保は難しいかもしれないので、まずは葬儀社の方に下見をとのことです。
 
 しかし、町内のお仲間や昔の常連客と最後のお別れの場としては申し分ありません。 都会では少数派なってしまった感のあるご自宅で、しかも仕事場でもあったお店から皆さんに見送っていただけるのは何にもまして幸せなことではないでしょうか。
 
 少し前にも、嘗て町の顔の一つでもあった銭湯でのご葬儀を執り行い、関係者皆さんに大いにご満足いただいたケースがありました。
 
「昔から銭湯の家族は銭湯から送るということになっていまして、現代では無理があると承知していますが、家族全員で話し合い、矢張りご近所のお客様を中心に考えて、銭湯で執り行いたい」とのご連絡をいただきました。
 特殊な状況下でのご葬儀になりますので、担当者は入念な打ち合わせをし、依頼者の方にはパーフェクトなご葬儀でしたとお褒めの言葉をいただき、間に入った我々も
ほっとしたのを思い出します。
 一口に銭湯と言っても様々です。
 例えば男湯と女湯を利用して式場とお清め処として使える広さなのか、祭壇を組むのに湯船の上にうまく収まるのか、土足張りにして靴のまま上がっていただいた方がよいのか、脱衣所のロッカーは移動しなければならないか、道路に面した銭湯前に受付テントが張れるスペースがあるのか、式場からお清め処への流れがスムースにいくための要となる番台はあるのか。担当者の臨機応変な対応力で様々な問題をクリアーしての旅立ちとなりました。
 住宅地でのご葬儀が少数派になってしまった昨今、思い出の地からの旅立ちができ、また、お送りすることもできるのはご近所付き合いの濃厚な商店街だけになってしまうのでしょうか。
 
 
 

ご葬儀は担当者がご遺族の「こだわり」の意に気づくか否かで決まります。

 ご葬儀のご相談は結婚式のように何ヶ月も前から持ち掛ける方はまだまだ少数派です。
 お医者様から準備をと促されて、とりあえずインターネットで検索し、情報を集めだす方が多いようです。
 しかし、情報だけは氾濫しておりますが、実際どのようになるのか中々見当がつきにくいのも事実です。
 勢い既製品で間に合わせるように決めて、可もなく不可もなくご葬儀が終り、心に残るものが今ひとつ実感できないもどかしさを感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
 ご葬儀の良し悪しは金銭だけでははかりきれません。ご遺族、担当者、周りのスタッフ皆さんの気持ち次第で大きく左右されます。
 まずはご遺族が故人との絆を大切にしたい、これだけはしてあげたいというこだわりを持つことでご葬儀に参加し、ご葬儀の担当者は無理難題なこだわりでも、できるだけご希望に添えるように考慮し、色々と提案します。
 そのやり取りの中で担当者が、こだわりの意にどれだけ気づけるかが大きな鍵になるようです。

 長患いの為念願のご自宅に戻れなかったため、病院からご自宅の前を通って斎場へ。 お花の先生の奥様がご主人のため生花祭壇創りに参加される。
 お父様が昔撮った短編映画を時間の許す限りお見せしたい等々。
 
 ご葬儀の後、ご報告いただいたご遺族の方々の笑顔が思い浮かびます。