社葬あれこれ

 社葬と一口にいっても様々なケースがあり、おかれた立場によりニュアンスの違いがでてくるようです。
 最近立会いに伺った中にも画廊経営の方とIT関連企業経営の方の社葬がありました。
 双方とも故人は団塊の世代でまだ働き盛りなのに、突然、人生のリタイアを宣告されてしまいました。
 画廊経営の方の場合、始めの段階では一般葬としての見積りで進行したのですが、ご夫婦が中心となって会社を経営されていらっしゃったので、残された奥様のためにも少しでも経費節減をと葬儀社の担当者が提案し、実行されました。会葬者は通夜と告別式を合わせて200名ほどで立て看板を見なければごく一般の神式のご葬儀でした。
 IT関連企業の場合はすでに社葬の1ヶ月以上前にご葬儀は内輪だけで済ませていました。こちらの会社幹部の方から依頼があったのはご葬儀後でした。ご喪家としては葬儀は済ませていますので社葬のお別れ会は会社に一任され、口出しされなかったようです。依頼者の実行委員の方は「抑えられるところはできるだけおさえたいが、きちんとした社葬で品よくお別れ会をしたい
」という希望でした。
 1人息子のご長男への引継ぎが慌しく行われているなかでの社葬の準備なので、そのあたりを
一番考慮しながら進めてきましたと葬儀社の担当者は語っていました。
 ご喪家は突然の悲しみに浸るまもなく、4月1日をもって新就任されたご長男にとり、この社葬はお父様の意思を引き継ぎ、存在をアピールする大切なお披露目の場でもあります。
 ある意味では今後の会社の存続に関わる重要な儀式でもあるようです。
 係りを社員総出で受け持ち、協力的で積極的な姿勢は社内の雰囲気をよく表しているようです。
 ご喪家をお送りした後、運営実行委員長は「明日からといわず、今から新しい出発です」と係りの社員にゲキを飛ばしていました。

ベテラン担当者の采配ぶり

 葬儀担当者は目の前の困難があればあるほど燃えるようです。
 無宗教葬の告別式に立ち会った日、お会いするなり、「今日は桐ヶ谷斎場までの途中が混み合うので少し早めに出発します」とのことでした。
 ご家族親族10名のみのご葬儀と伺っていましたが、開式30分前すでにかなりの会葬者がお見えになっている様子。
 私の浮かない顔をみるや、担当者は「実は家族葬ということでしたが、昨晩の通夜は80人以上お見えになり、お食事時間をできるだけ遅らせる作戦に出ました。ご焼香の後、柩の蓋を開け、お別れ会につなげました。献花用のお花は急遽生花をちぎり、会葬者全員にお渡しし、お1人ずつそれぞれの思いを込めて柩に語りかけ、最後のお別れをしていただきました」。
 こちらの式場はお清めの部屋とぶち抜きのような感じになり、応用が利く使い勝手の良い式場と普段持ち上げていたところですが、間が悪いことに、今回はそれが裏目になってしまったようです。お食事は25人分しかありません。なんとしてもお清めのほうに行かせないように。ご喪家に恥はかかせられません。
 結果この日しか来れない人の為にお別れの会は功を奏して、時間は19時半過ぎまでかかり、会葬者は心の満足感を味わったようです。勿論、お食事も十分間に合いました。
 告別式も弔辞を読む方々にご喪家の形式ばらない式にしたい旨をお話しすると、皆さん胸ポケットに原稿を仕舞われ、遺影に向って思いの丈を話されたようです。
 時間が進むにつれ会葬者も更に増えてきました。一般のご焼香も皆さんゆっくりと進み、思わぬ時間が掛かっています。担当者はお別れの儀に入るやいなや柩を前に出す作業から始め、すぐに一旦ロビーに出ていたお身内の方に入っていただき、柩にお花をいれていただきます。時間との戦いでしたが、それは内輪での話し。式はあくまで悲しみの中にも、ゆったりとした時間が流れています。一般会葬者の方々も昨日同様献花で最後のお別れです。奥様の最後のご挨拶「24年間どうも有り難う」で締めくくられ出棺となりました。時計はなんと定刻5分前。手際のよさとベテランの意地を見せていただきました。

4ヶ月間の往復メール

 A氏からの事前相談をお受けして4ヶ月になりました。
 昨日、葬儀社の担当者から「これから長野に迎えに行きます」と連絡が入りました。

 お医者さんから奥様の容態が思わしくなく、覚悟の程を知らされたが、そのときに如何すればいいか分からないことばかりでと、ご連絡を頂いたのは昨年師走の声を聞く頃でした。
 
 自宅は神奈川県ですが入院先の病院は長野県。万が一の時は1度ご自宅に帰り、家族、親族、友人のみの家族葬で送りたいとのご希望でした。
  依頼者の最初の質問は搬送代は幾ら位を想定すべきかということでした。
 通常、業者に依頼すると距離から考えて10万円~15万円位だそうですが、見積りをお願いした葬儀社では自社の寝台車を半額以下でお出ししますとのことでした。ご要望等をお聞きして概算の見積りを取った後、依頼者との往復メールが始まりました。
 見積りは家族葬コース2種類をお見せしたのですが、そのコースの違いやお布施の金額に関すること、会葬者が増えた場合の金額の変化などの質問から始まりました。
 年が空け、次に心配なさったのは、お布施の俗名の意味、搬送用の車のこと、どのくらいで病院に迎えに来てもらえるか、納棺の時機等でした。
 その後、祭壇の写真やパンフレットを長野のお宅にお送りし、検討して頂きました。
 1ヶ月半ほどはご連絡が無く、便りの無いのはいい知らせとばかり思っていたのですが 葬儀社の担当者にはその間も何度か連絡が入、その都度持ち直しをされたようです。
 4月に入り、斎場での宿泊、お香典のことなどを心配なさっていた矢先、ついに帰らぬ人になってしまいました。依頼者のお気持の変化が質問を通して色々伺え、胸の詰まる思いです。合掌。

葬儀担当者の気配り

 お身内だけで見送る家族葬が都市部を中心に増え続けているようです。
 しかし、突然の不幸にご喪家の方々は何処から手をつけてよいのか途方に暮れるばかりです。
 そんな中で、ご喪家の要望を伺い、限られた時間の中テキパキと指示を出し、無事葬儀を終了させるのは葬儀社の担当者の腕一本に掛かっているといっても過言ではありません。
 特に少人数の場合は1人の担当者が最初から最後まで面倒をみることが大切です。
 式次第は途中でも引き継ぐことはできますが、ご喪家の微妙な気持の流れを汲み取ったり突発的な事柄を即座に判断し相手を説得させることは、信頼関係なくしてはできません。
 安心して任せられると思わせることが重要です。
 ご喪家の身になって最後まで見取り、一期一会を大切にする担当者であることが必須です。
 
 こんな事例がありました。 
 依頼者からは親族だけ30名程で、無宗教の1日だけの葬儀にしたいとのご相談。
 最初の概算見積りでは通常の火葬場での待ち時間内のお食事会でしたが、葬儀社の担当者は1日だけ、しかも久しぶりの親族の集まりなので、1時間弱の慌しい時間ではなく、火葬終了後、別な所に席を設けゆっくりやられることを提案し、特にご親族から大変喜ばれたとのことでした。

こだわりの葬儀

 お葬式と聞いてまだ縁起でもないと思う方が多いのだろうか。
 ご自分の葬儀をイメージしたことはありますか。
 生きていくのが精一杯でそんな余裕なんかありません。
 でもちょっとだけ考えてみてください。
 生前は一人ひとりその生き方にこだわってきた方も、最後は半強制的に常識の枠の中に押し込められてしまうようです。これはご本人というよりか、周りの方々の意向が強く左右され、決められるためでもあります。
 ならば、生前に思いきってご自分の葬儀を企画してみるのも、一つの生き方かもしれません。
 但し、この企画に乗れるのは自由人であることが条件です。此処でいう自由人は仕事のことではありません、心の問題です。心の垣根を取っ払えるかどうかです。
 規格外の葬儀社かもしれませんがそのような相談にアイデアを出し、四つに組んでいる担当者から伺った事例。
 以前バンドをやっていた80過ぎの方の場合:
 お住まいが伊豆の方で、時間の問題もあり、火葬だけ地元の業者さんに頼み、浜辺に昔のバンド仲間が集まりオールナイトのコンサートをしました。
 夜通し飲んで食べて、明け方船を出して沖合いに散骨。
 船を出す時浜辺で送り火をたいて送り出しました。
 音響機材とテントと仲間達のボランティアで出来た、ひとつのお別れ会です。
 こだわりの葬儀は事前の企画が大事です。 

葬儀社から伺ったことーご遺族への対応の仕方

 都会の核家族化と言われ30年余り、その代表選手の団塊世代からのご相談が多い昨今ですが、地方の風習に則った葬儀ではない葬儀をどうやれば良いのか分からず戸惑う人達が増えてきているのが現状です。
 年取ったご両親を引き取りお見送りする段になって初めて気がつくという具合のようです。
 勢い、葬儀社任せになり、うっかりすると葬儀とはこういうものだとある意味押し付けがましくなるのは気をつけなければと葬儀社の担当者は自警の念を込めて語ってくれました。
 
 本来、ご家族を考え、地域性を考慮したり、故人の性格やもろもろのことを考慮したうえで、こんな形がありますよと説明しながらやっていくとのことです。
 葬儀が始まる前にご遺族の信頼を如何に掴むかにかかっています。
 特に納棺前までに適切なアドバイスをしてご遺族に安心感を与えることが大事。
 こうしなければいけませんではなく、この場合はこうした方がいいですよとアドバイスします。
 ご遺族の要望は出来る限り聞くことで信頼感を得ています。
 また、菩提寺がある場合は菩提寺の考えを優先し、まずお伺いを立てます。菩提寺の日程を伺ってから葬儀の日程を決める気配りは大切です。
 担当者は色々仕切りますが、主役はあくまでご遺族です。

ある葬儀社さんのこだわり

 以前、葬儀社にご挨拶に伺った時、開口一番祭壇の前に置かれている柩を如何思いますかといわれ、正直とっさに返答に困ったことがありました。
 祭壇は亡くなった人を飾るのであるから、亡くなった人が綺麗に飾られているかが問題で、そのためにも柩は祭壇の上に置いて飾るのが大切ではないかと言われました。
 葬儀社は故人との接点はないので生きているという存在として捉えると、どうして柩が前にでられるのか。それは物として扱っているからではないかとのご指摘でした。

 「うちは参加指導型でやっています」とは担当者の言葉です。
 「葬儀社が全てやってしまうのではなく、ご喪家の方々にもお手伝いしてもらいながらやることで、皆さんに参加するという意識を持ってもらうことが大切だ」ともおっしゃる。
 こちらでは故人のメイクもプロに頼まず、ご喪家の方々にも参加してもらい、お手伝していただく。そうすることで、ご喪家と同じ目線でどうしたいかを話し合えるとのことです。

 通夜・葬儀・告別式の儀式が中心になってしまうが、中心はあくまで故人であることを忘れずに・・・。長い生涯の中でたった3~4日を如何に大切にできるか。
 先ずはご自宅に帰り、その日1にちはゆっくりお布団に寝かせたい。
 翌日、お布団の上で身体をご家族の手で拭いて貰ってから納棺。夜中そばで見守ってあげたい。
 次の日に初めて通夜となる。こうして死という現実を分かろうとする時間が必要であり、お孫さん達も亡くなった人に対する意識が変わり、接し方も変わってくるようです。
 
 最後のお別れも、できるだけゆっくりお花を柩に入れた後、柩の蓋を閉めるまでの空白の時間を大切にします。
 喪主の方を見ながら声をかけ、タイミングを計ります。皆様にお別れがゆっくりできましたと言われるように。
 職人気質・葬儀社さんのこだわりです。

思い出コーナー

 ご喪家のご要望で生前故人が愛用したものや趣味の作品、家族との思い出の写真を式場のコーナーに飾り、葬儀に出席していただいた友人知人に見ていただくことがよくございます。
 通夜や葬儀の始まる前、悲しみの中にもそのコーナーの周りはおしゃべりと時には笑い声さえ聞えます。
 生前、なかなかお会いできなかった故人との思い出が、1枚の写真を巡ってよみがえって来るようです。
 1枚1枚の写真はごく普通の家族のスナップ写真であっても、その時代に関わった友人にとって貴重な最後の1枚になります。
 
 昨年、ご喪家からいただいた礼状の中で思い出コーナーに触れたものも幾つかございました。
 なかでも、コーナーの作成を葬儀社のほうで全てやる場合と、ご家族の皆様に手伝ってもらい、少しでも自分達の葬儀である実感を味わっていただくやり方があります。
 頂いた礼状は後者の方でした。通夜の当日午後2時くらいから準備に入りました。
 
「母や妹夫婦と思い出コーナーなどをあれこれ準備しておりますと、親族の結束も深まるようで、また、展示した若き日の父母や、幼い私どもの写真を間に会葬者との話も弾み、親父がおれも話にいれてくれと話しかけてくるような心温まる葬儀になりました。」とのことでした。 

お葬式も宗教戦争?

 依頼者は故人の妹さんでした。
 第1報では区営斎場をお借りして、キリスト教・プロテスタントでの家族葬をご希望され、牧師さんの手配もお願いしますとのことでした。
 もしも牧師さんの紹介が煩雑であれば無宗教もしくは火葬のみのこともありえるとのこと。  少々切迫感があり、事情がありそうなご様子でした。
 葬儀当日、葬儀社の担当者に伺うとご家族の方々の信仰の対象が違い、それぞれが主張なさっているようです。
 お父様はキリスト教が大嫌い。
 その為に故人と妹さんとお母様は隠れキリシタンのようにお父様に内緒で教会に通っていらっしゃったようです。それでも最後に事情が分かってしまい、お父様は大層ご立腹で、葬儀をぶち壊すとまで言う始末。
 キリスト教関係の場合は通っていらっしゃる教会での牧師さんによって執り行われることが殆どですが、それも出来ずのご相談でした。
 葬儀社がお願いした牧師さんによると、信者の方でもしばらく教会を離れている場合などで、時にはこういうこともあるそうです。
 葬儀予算も火葬のみ位でしたが、費用を抑えたコースで、1日だけのキリスト教プロテスタントの葬儀・告別式がおこなわれました。
 柩にお花をいれるお別れの儀の後、柩の蓋を閉めるのを待ってもらい、お母様と妹さんは声を掛け合い暫しの間、故人と3人で無言の話し合いをしているようでした。
 お父様はとうとう最後までお見えになりませんでした。
 病院での最後のお別れを覚悟なさったようです。
 

葬儀費用のこと

 葬儀の立会いに伺うと、受付横にご遺族のご意思によりご香典をご辞退する旨の看板を目にすることがあります。

 しかし大方の場合、葬儀総費用に関して見積る時は香典を考慮していらっしゃる方が多いようです。 ご家族のみの葬儀を除けば、葬儀に掛かる費用の内、変動の激しい飲食代(お清め、精進落し)と返礼品は人数が増えた分、頂いたご香典で賄うことができます。

 費用を幾ら位に抑えるかの目安として、日本人の90パーセントは仏式ですので、お坊さんを第1に考え、先ずお布施を先に考えて、後残った費用で葬儀を考えます。
 次に、社会通念上必要な通夜の飲食費(特に近所付き合いの中では比重が高い)を考え、お布施と飲食代を除いた費用が葬儀費用になります。
 極端な話、火葬場と霊柩車と柩があればお葬式ができます。
 やりくりは如何様にもできます。