お清めは読経後にお願いします

 以前、神奈川県大和市にあります大和斎場に立会いで伺った時、式場入口脇の看板に書かれた「厳粛な儀式を行うため、会葬者の通夜のお清めは読経終了後とさせていただいております」の文字を見て思わず頷いたものでした。
 仏式の通夜の場合、一般会葬者はご焼香が終ると、式場から退場し、お清め所に誘導され通夜ぶるまいを受けます。
 先ほどまで沢山の会葬者に見守られていた式場も御家族・親族だけになり、一気にガランとした雰囲気になるのは否めないようです。
 ご焼香が済んだのだからと言えばそれまでですが、脇で立会っている者から見るとせめて通夜式が終るまで集まった方々と故人が共有の時間を過ごせないものかと思っていた折でした。
 式場担当者に伺うと、こちらの思惑とは多少ニュアンスが違って、式場とお清め所が隣接しているため、ご家族が悲しんでいる時、隣で騒いでいるのは如何なものかということから通夜ぶるまいは読経後となったようです。
 理由はともあれ結果、大多数の参列者が式場に残り、通夜の読経が終るまで一緒に故人を偲ぶことができ、好評とのことです。
 一方の無宗教葬やキリスト教葬の通夜では、式の最初から最後まで会葬者全員が共通の空間で悲しみを共有することができ、その点では参列した人の感銘度も高いように伺っています。
 
 

ご喪家代表のご挨拶

 出棺前、喪主の方が代表して会葬にいらっしゃった方々にお礼の言葉を述べるという一般的な儀式の多い中で、最近は故人の死に至るまでの経過報告をなさるケースが出てきているようです。この場合は喪主というよりは身近な奥様やお嬢様からの報告になります。わざわざお忙しいなかを時間を割いて来て頂いた友人や教え子に、本当のことを納得いただけるようにお話したい、またお話しする義務があると意を決して話されるようです。
 病に倒れてからの生活ぶりや病状の変化、周りの状況をつぶさに報告されたり、あるいは出来ればそっとしておきたいと思われることまで包み隠さずお話しなさることもありました。お話しすることで、久しくお会いできなく心残りだった友人知人も納得し、一斉にほっと肩の荷を降ろすことができるようです。
 若年性のアルツハイマーに苦しまれ、最後奥様やお母様の手を振り払って家を飛び出し自ら命を絶ってしまわれた方の場合も、奥様が気丈に新たな決意を秘めて仔細に報告なさっていました。
 限られた時間の中、5分~10分は費やされるので葬儀社の担当者は時間調整が大変ですが、皆さん1度として時間の催促することはありませんでした。
 異口同音に「心ゆくまでお話しをさせることがこのご葬儀では必要なことなんです」と担当者の心遣いの一端を語ってくれました。
 よく、葬儀はあくまでご喪家主体のものであると言われていますが、傍から見ているとどうしても葬儀社主導で儀式を静々と進行させているようにしか見えないことが多いものです。
 そんな中、決意を秘めたお話しぶりで一気にご喪家主導の葬儀に切り替わったようにも思われました。

無宗教葬 その4 兄弟の反対を押し切って・・・

 故人は都内で長年、ジャズ喫茶をやっていらっしゃった方でした。
 当方が立会いに伺ったのは告別式でした。前日の通夜の様子は葬儀社の担当者から聞きました。式場の臨海斎場は火葬場が併設され、都内5区で運営されている斎場です。音楽葬の為制約があり式場候補の中から消去法でこちらに決めたいきさつがありました。かなり利用頻度の高い式場なので待たされるのを心配しましたが、友引の日ですぐ予約がとれ、しかも隣の式場が空いていたので、多少の音も目をつぶることができたようです。
 喪主の奥様は無宗教の音楽葬でという故人の意思を尊重し、昔からのジャズ仲間を中心にご兄弟、ご親族の方々に集まっていただきました。
 担当者も色々工夫し、献花台を正面に置かず、わざと右側に置き、献花をしてから正面の柩の故人とゆっくり話をしてもらう方法をとりました。その左側には思い出コーナーを創り、ご対面後故人との思い出の写真や品物を見て頂くような流れを創ったようです。
 感極まったジャズ仲間が飛び入りで持参のトランペットを吹き、皆の熱い思いは尽きないようでした。
 一方のご親族は式の始まるまで無宗教葬に難色を示し、特に故人のお兄様は大反対でした。しかし、仲間の深い友情を目の当たりにして、ついに通夜の最後の挨拶では涙ながらに「こんな素晴らしい通夜は初めてだ」と感激していらっしゃったそうです。
 翌日の告別式は御家族、ご親族のみの見送りになりました。ジャズが静かに流れる中、お身内同士のおしゃべりが弾んでいました。30分遅れの献花に始まり、柩を囲んで最後のご対面をしていただきましたが、式の間中しばしゆったりとした時間が流れているようでした。
 火葬を待つ間、2階のお清め室ではお食事会となります。
 奥様に向ってお兄様のご挨拶から始まりました。「これからもどうぞよろしくお願い致します」。

最近の無宗教葬 その3  グラスでカンパイのお別れ

 目の前の柩がなければパーティ会場と間違えてしまいそうな雰囲気の告別式に立ち会いました。
 故人は彫刻家。会葬者は全員故人と縁の深い方々50名余り。会場は寺院の会館ですが多目的ホールとして使われ、あまり宗教臭さのないところでした。
 立食のパーティ会場前方には白い薔薇の花に囲まれた柩と故人の作品のパネル写真が飾られていました。
 受付を済ませた会葬者は式場壁際のイスにて、式の始まるのをお待ちいただくことになりました。手前の二つの大きなテーブルにはご喪家の手作りのオードブルを初めとする料理がグラスやワインと共に並べられています。
 後の式内容は自分達で決めたいというご喪家のご要望でしたので、葬儀社の担当者は黒子に徹して色々と気を使ったようです。
 年配の会葬者の為に駅近く交通の便がよい、音楽をかけても大丈夫な式場を、しかも1日だけのお別れ会なので半額にするという格安の式場を捜してきました。
 会葬者は1本の白薔薇をお1人ずつ柩に入れ献花としました。入れ終った方々はワイン、ビールを片手にお料理を頂きます。
 献花が終ったところで喪主の奥様よりご挨拶、友人代表のご挨拶と続きました。その間もお友達同士久しぶりの旧交を温め、お互いの話しが弾んで、柩の故人も話しに加わったらと思われるほどでした。マイクが手に渡ると皆さん次々思い出話に花が咲き、それでも最後の方になると「何百回も会い別れているのに、1度たりともさよならを言ったことがない。じゃあ、またね」と涙で絶句。
 ご喪家を代表して息子さんがグラスを上げ「父の旅立ちに先立ちましてカンパイ」。
 最後のお別れ花は柩の周りの白薔薇を皆さんで手向けました。
 その間、テーブルのグラスやお料理はご喪家の手で手際よく片付けられ、柩の通る道が開けられました。お料理の残りはラップされ、食べ残しはビニール袋へといつものパーティのように手の空いている方があうんの呼吸で手伝っていらっしゃったのが印象的で、ご自分達の手でやっているという実感が感じられました。

 いよいよ出棺です。式の間ずっと流れていたカザルスの曲が一段と大きくなりました。

最近の無宗教葬 その2

 仏式、神式などと異なり無宗教葬での通夜・告別式は通常まずご喪家側から無宗教にしたいきさつをお話しし、会葬者にご理解を頂くことから始まります。
 通夜・告別式とも内容的には似ていますが、告別式はどちらかといえばお身内の方が中心になりますので、より家庭的な雰囲気の濃いものになるようです。

 故人が生前好きだった音楽を流したり、献花をしていただいたり、近親者が思い出を語るというやり方が多い中で、昨年大変印象的な無宗教葬に立ち会いました。
 通夜の席、祭壇に手を合わせた後、100人以上の会葬者お1人ずつがマイクを片手に柩の故人に語りかけました。
 長い沈黙のあとぼそっと一言話す方、出会いから現在の心境まで詳しく話す方、涙声で聞き取れない方、皆さんそれぞれ最後のお別れです。
 故人と向き合ったお1人お1人の言葉はどんなに短くても、パーソナルな関係からその人となりが出て、次第に一つのドラマになり、式場全体に一体感が生まれて来るようでした。目を閉じて聞いていると故人の世界が広がり、面識が無いのにいつの間にかこちらまで、旧知の間柄のような錯覚さえ覚えてしまうほどでした。
 ご遺族のお子様達も「私たちの知らなかった父の一面を知ることができました」と感激の面持ちで涙ぐんでいらっしゃいました。

最近の無宗教葬その1

 葬儀ご相談の全体数からみるとまだ少数ですが、無宗教葬でという方が増えてきています。
 現実にはまず菩提寺がある場合は納骨の問題をクリアーしてからでないとなかなか難しい状況です。ただ、菩提寺が遠方にあり、東京では無宗教葬にして、郷里の菩提寺で改めて納骨式をすることでお許しを得ていますという場合も時々あります。
 信仰心が無いから無宗教でいうのではなく、実際におやりになる方の場合は、逆にはっきりした信念をお持ちの方が多いように思われます。限られた時間をどのように使うか担当者とご遺族の共同演出の出番です。請け負った葬儀社のレベルが試されることにもなるようです。

調布市にある金龍寺大雲閣での会葬者多数の無宗教葬に立ち会いました。

 会葬者150名ほどの無宗教での通夜に立ち会いました。

 秋田に菩提寺がありましたが、納骨法要等は通常通り行なうことでご住職に納得していただき、こちらでは無宗教でお願いしますとのことでした。改めて確認をとりましたが以前お母様の時にも問題がなかったので今回のお父様も同じ様にしたいとのご要望でした。

 故人はジャーナリストで交友関係が広い方でしたが、ご高齢なのでご喪家としては会葬者数が絞りきれず、一般会葬者数を50名ほどとして見積りを出していました。
また、最初の見積りでは多磨日華斎場を想定していましたが、亡くなられた時点で1週間先まで塞がっている状態でしたので、日程を優先してご自宅近くのこちらの斎場に決めたいきさつがありました。

 通夜当日は1時間前くらいから友人が続々と詰め掛け、連れ立って故人との対面をしていらっしゃいました。柩を取り囲み祭壇の写真と柩の中の顔を見比べながら「笑顔を取ればそっくりそのままだなあ」と見入って、暫したたずんでいらっしゃいました。

 無宗教での通夜はお別れの献灯から始まりました。まずご喪家の皆様お一人ずつ灯りのついた小さなキャンドルを祭壇前のテーブルに置き、手をあわせました。次にご親族の方お1人ずつが大きなキャンドルを手に持ち、祭壇前のテーブルに置かれた小さなキャンドルに点火していきました。

 ご親族の献灯終了後は、黙祷、喪主のご挨拶へと続きます。

 その後は、お父様の古くからの友人や交友関係がよく分からないので直接対面してお声をかけて欲しいというご喪家からのご要望に沿って進行することになりました。会葬者は祭壇に向かい手を合わせた後、お1人ずつマイク片手に故人とご対面し、顔を覗き込みながら話し掛けていました。中には言葉にならず、しばし絶句する方もいらっしゃいました。長い間闘ってきた同志の結束には特別な感慨があるようです。

 故人の人となりが伝わる様な式になったように思われます。予定の会葬者の倍以上の友人知人が集まり、翌日の告別式にも遠方から多数駆けつけたという報告も聞きました。

 依頼者も友人の温かさを感じ「私たちの知らなかった父の一面を知ることができました」としみじみ語っていらっしゃいました。

 特に今回葬儀社の担当者、進行役のナレーターともに女性で、男性は後方支援に回り、柔らかな物腰とさりげない気配りでの連携プレーが際立ったようです。一般会葬者席がすぐに一杯になり席を次々に増やし親族の席にもお座りいただいたが、そっと近づき遅れていらっしゃったご親族、一般会葬者お1人ずつに手短に説明し、親族にはキャンドルを、一般会葬者には柩とご対面していただくことをきちんと区分けしていました。

 翌日の告別式は献灯に代わりフラワーボックスにお花をさす献花になりました。柩には友人知人の思いが込められた沢山の色紙が入れられ、ご遺体はご自宅の前を通って火葬場に向われました。

神奈川・茅ヶ崎市斎場での家族葬に立ち会いました。

 茅ヶ崎市斎場での会葬者15名ほどの葬儀・告別式に立ち会いました。ご喪家のご要望は祭壇の花を多くして見映えよく、しかもできるだけ費用を抑えてとのご注文でした。式場費が安く使い勝手が良いということから葬儀社の担当者はこちらを紹介したそうです。

 式場内の祭壇を置く周りが大理石でどっしりした感じなので家族葬用のこじんまりした祭壇も思わぬ効果を出しているようです。

 予定の会葬者15名のうち9名しかいらっしゃらなかったが式は定刻どおり始まりました。定員75名の式場なので真ん中だけ使用と言う形になりましたが、式場を少し暗くして照明を2灯両サイドから照らしたので、思いのほかガランとした雰囲気にならなかったようです。

 葬儀告別式が終わり繰上げ初七日の法要も終わろうとする頃、急に入口付近がざわつき1家族6名が飛び込んできました。日曜日で途中車の渋滞に巻き込まれ、にっちもさっちもいかなくなってしまったようです。取る物も取りあえずご焼香を済ませた皆さんはほっと安堵の表情を浮かべていました。

 最後のお別れ、お花入れの儀では後から駆けつけたお孫さん達が目を真っ赤にして柩のお祖母様にお花を手向け話しかけていました。傍で見ていても「何はともあれ間に合って良かった」と胸を撫で下ろしました。ストレッチャーに乗せられた柩が式場を後に火葬場に向う為長いエントランスに出ました。後に続くと雲ひとつ無い真っ青な空と小鳥のさえずりがいきなり目と耳に飛び込んできました。

馬込斎場での一般的な仏式の葬儀に立ち会いました。

 馬込斎場での会葬者30名余の葬儀・告別式に立ち会いました。通夜は喪主の会社関係者が大半で150名程でした。ご遺体は直接こちらの斎場ではなく、葬儀社の霊安室に中1日置かれ、通夜の日に運ばれました。葬儀社は安置料を無料にしてドライアイス料のみ頂いたそうです。

 依頼者は費用を抑えられるところは極力抑えたいとのご要望で、始めは花祭壇をご希望でしたが、備え付けの白木祭壇が3,700円で借りられるので結局こちらの方を選ばれました。

 会葬者数から第1式場を使用しましたが、間口が広く備え付けの白木祭壇だけでは両脇の供花が少ないと寂しい感じになりますので、葬儀社の担当者は祭壇上の広い空間に水引の幕を張って安定感を出し、供花の両サイドには御霊燈の提灯を置き、祭壇に奥行きを出したようです。ちょっとした工夫や並べ方でずいぶん違った雰囲気になりました。水引の幕は葬儀社のサービスです。

 出棺後は初七日の法要ができませんので、告別式の後、続けて行なわれました。こちらの斎場では収骨後そのままお帰りいただき、式場に戻れません。

 最後のお別れの儀はお身内だけで柩に花入れをしましたが、ロビーにお待たせしていた一般会葬者の中で場所を移動された方達がいらして、葬儀社の担当者が手分けして捜しに行くハプニングがありました。喪主のご挨拶の直前に戻られ事なきを得ましたが、傍で見ていても思わず緊張が走ります。会葬者の皆さん全員で柩をお見送りでき、ほっと胸をなで下ろしました。

埼玉・草加市の西往寺公明殿での葬儀に立ち会いました。

 会葬者25名ほどの葬儀・告別式に立ち会いました。公明殿斎場はご喪家の要望でした。但し、ご喪家の近所にあり、葬儀を執り行っているのを外から見たことがある位で、詳しいことはご存知なかったようです。こちらは専従の葬儀社が入っていましたが、ご喪家のご要望で当センターが紹介した葬儀社でやらせていただきました。

 祭壇は式場にセットされているものを使用しました。式場の間口が広く祭壇がシンプルなので供花の華やかさが目を引きました。故人はまだ60代の女性。ピンクと白の洋花を基調にした花が両脇に並ぶと花祭壇のようにも見えました。

 担当者は女性スタッフが中心となり、ナレーションから始まり、物静かな中にも厳かな雰囲気を出していました。後からきた会葬者にはさりげなく物音を立てないでイス席をつくり、気配りをみせていました。

 繰上げ初七日の法要を告別式に続けて行いましたので、火葬場で収骨後再び斎場に戻り精進落しになりました。