桜とお見送り

疲れからか、うつらうつらしていると、ぱっと目の前が明るくなり、何事かと慌てて周囲を見渡すと、火葬場に向かうバスは丁度桜のトンネルの真っ只中を進行中でした。

 母の危篤状態が続き、東京と実家を往復する慌しい日々を過ごし、季節の移ろいを感じる余裕も無く、その時初めて桜の季節になっていたことに気がつきました。
 あれから、7年経ちますが、その衝撃が何処か尾を引いて季節がめぐってくる度に思い出す、胸騒ぎのする特別な花になってしまった感もあります。
 
 立会いに伺うご葬儀でも桜の花は特別で、この季節になると葬儀社の担当者も他のお花とは別格に選ぶ方もいらっしゃるようです。

 昨年のご葬儀では故人様の生きかたに感動された担当者が、御霊灯の提灯の代わりに見事な枝ぶりの桜を社からのサービスとして式場両側に生けると、桜を囲んでご会葬の方々の輪が膨らんで、故人様への想いが寄せられ、皆様それぞれに印象深いお見送りとなられたご様子でした。

 先日立会ったご葬儀でも、担当者はご家族からご自宅前の公園でよくお花見をされたお話を伺い、お花畑に見立てた祭壇には満開の桜が添えられました。
 ご葬儀の間中故人様を見守っていた桜は、故人様がこよなく愛したお酒といっしょにご家族皆様の手により柩に納められました。

 今年の桜は予想に反して、一気に花開いた感があり、早くも春分のこの季節に、満開の桜の下でのお墓参りをされた方もいらっしゃいますが、ご葬儀では散り行くまでにどのようなドラマが待ち受けているのでしょうか。
 以前、桜吹雪の中のご出棺を目の当たりにして、万感胸に迫るものがありました。

葬儀業界の人材の流動性について

 当センターの賛同社になるパターンにもいろいろありますが、葬儀社に長く勤めていて独立し、実績もできてきたので、当センターに賛同したいというところも多いです。たしかに、サラリーマンとして終身で同じ1社(数社)に長く勤めるのも稀なようです。それなりに経験がないとダメでしょうが、葬儀社を始めるには許可はいらないので、明日からでもすぐに始めることができます。

 となると、葬儀社の数は増えていく一方の感じがしますが、そこは、お客さんに支持されないと存続はできないという自然淘汰の力が働くので、廃業するところも多いと思います。そうなると、またどこかの社に勤めるというようなことになります(違う業界に行くということはあまりない、後述)。

 人材の流動性がある、という言い方もできるでしょう。この流動性は、先ほど述べたような葬儀業界内で完結するだけでなく、外部との出入りもあります。入りは、葬儀業界以外からの流入です。出は、葬儀業界から外部への流出です。

 流入は、隣接業界である返礼品業界にいた人や花屋さんにいた人から、葬儀とはまったく関係なかった人が成長産業のように思われる葬儀業界に入りたいという人まで様々です。社会状況から言っても、この流入圧力は相当強いものがあります。
 逆に、ある程度の年月を葬儀業界にいた人が、他の業界に移るということはそれほど多くないように思います(新人で葬儀が合わないと言ってすぐ辞めてしまう人も相当多いでしょうが)。

 葬儀業界で経験を積んだ人が、違う業界に行かない理由は、いろいろあるでしょうが、先日、交通事故で父親を亡くされた人と話していて、理由の一端がうかがえます。
 「突然、父親がなくなり、呆然としていた母親は、昼夜を問わず相談にのってくれ、適切に話をしてくれる葬儀社の担当者を誰よりも頼もしい存在だと思っている」

 頼りにされるという感覚を一度でも味わうと、何度でも味わいたくなる(誠実にやっている人に当てはまる話です)。

家族葬で気をつけたいこと

 ここ数年、都市部では家族葬というご葬儀のかたちがかなり浸透し、私が対応させていただいたご相談でも、約8割の方が家族葬を望まれています。
 私がお聞きしたご相談では、家族葬を望む理由として、ご対象の方が高齢で、今ではお付き合いをしているひとがいない、ご友人たちもご高齢で会葬に来ていただくことが難しいのでというものが最も多く、次いで、ご会葬の方に気遣うことなく、家族・親族だけでゆっくりと見送りたいから、本人の希望、費用を抑えたいからなどということがあげられています。

 家族葬でのご葬儀は、近しい方、親しい方のみで執り行うため、温かみのあるご葬儀を希望されている方にはとても適したかたちだという反面、気をつけなくてはいけないこともあります。

 故人様が親しくお付き合いをしていた方以外にも、その場所に長くお住まいになっていた場合、また、ご家族が引き続きそこにお住まいになるような場合には、ご近隣の方への報告に迷われることがあると思います。
 最近では、家族葬という意味合いも浸透してきていることから、「近親者のみで執り行います(執り行いました)」などの報告で理解していただけることも多くなりましたが、ご葬儀後のまだ落ち着かれない時期に、弔問の対応に追われてしまうということにもなりかねません。
 ご近隣の方とのお付き合いについての気遣いが必要です。

 また、ご本人の希望でという場合には、「家族に大変な思いをしてほしくない」というご家族を思いやるお気持ちなども含まれているものだと思うのですが、そのことをご親族などにも納得をしていただく必要があります。

 費用面については、家族葬だから安くできると思われがちですが、場合によっては一般葬と同じくらいの費用がかかることもないことではありません。
 利用する式場や、おもてなし、また、選ぶ祭壇などによっても費用に差が出てきますが、利用する葬儀社によっても、同じ条件で費用が大きく違ってくることもありますので、可能であれば複数の葬儀社から見積をもらって比較してみることをお勧めします。
 
 故人様を想う気持ちに専念し、暖かいご葬儀を執り行っていただくためにも、家族葬をお考えの方は、周囲のことを少し見回してみてください。

団塊の世代を中心に、ご葬儀にも変化の兆しが・・・。

 ワイングラス片手の写真の主は、今にも「やぁ」と声を掛けてくるのではと思わせる、気さくな微笑みを浮かべていました。
 その横には「感謝の気持ち」と題して、生前のご親交に対してのお礼の言葉が記されていました。

 ご会葬の方々は1枚のパネルに足を止め、思い思いの感慨にふけっているご様子です。

 先日立会いにお伺いした60代の方のご葬儀は、故人様のご意向でお別れ会という形の音楽葬でした。

 生前にご自身が準備をされ、ご自身のご葬儀を演出されていらしたご様子です。
 愛唱歌の「愛燦燦」の演奏が始まり、「人生って不思議なものですね」思わず口ずさみながらお花に囲まれた棺に目をやると、2年前の映画「エンディング ノート」の60代のモーレツサラリーマンの姿がだぶってきました。

 それまでお元気だったサラリーマンのお父さんが定期健診で癌を宣告され、余命いくばくも無いことを知り、映画監督の娘さんがお父さんの最期までをある意味淡々とドキュメントで追いかけていく映画は、モーレツサラリーマンのお父さん必見のものでした。

 サラリーマン時代、営業一筋で「だんどりが命」のお父さんは最後のだんどりにご自身を選ばれました。
 ご実家は仏式でしたが、新たに購入したお墓は宗派を問わないとのことで、キリスト教葬に決め、1ヵ月後、結婚式以来と軽口をたたきながら奥様と式場の下見をされ、なぜこちらを選ばれたかを説明されていました。
 ①好印象である
 ②家から近い
 ③リーズナブルであること等をあげられ、
 また、ご葬儀は近親者のみで行いたいと・・・。
 映画「エンディング ノート」は自身の死に対して、一人ひとりが向かい合うことの大切さを教えてくれました。

 ご葬儀の意味合いも、最近は家から個人へと変わりつつあります。
 しがらみが少ない都会では、団塊の世代を中心に、徐々にではありますが、これからはご自身の希望を優先し、自分らしさを演出した葬儀が増えてくるのではと思われます。

ご利用者からいただいたアンケート

 ネットショップで買い物をしていると、たまに「レビューを書くと×××円→○○○円」と、商品の感想を書くことを条件にその商品が安く買えるという特典付きの商品に出逢うことがあります。
 もちろん、「レビューを書く」の方を選択してお買い得の方を購入するのですが、商品が届き、レビューは「後で書こう」と思いながら、そのまま書かずに放置してしまっていたことが何度かありました。

 センターでは、ご利用いただいた方に後日、アンケートの用紙を送らせていただいていています。残念ながら、特典などのご用意はないのですが、それにも関らず多くの方からご回答のご協力をいただき、ご葬儀後のまだ落ち着かれないような時期に書いていただいていたと思うと感謝の気持ちでいっぱいになります。
 また、センターのホームページでは、これからご葬儀を考える方に参考にしていただくために、掲載を許可していただいたアンケートを掲載させていただいていますが、この掲載についても多くの方にご協力をいただき、とてもありがたく思っています。

 利用した人にしかわからない、率直なご意見は、センターにとっても貴重な財産になります。

 私はこの仕事に就くまでアンケートに協力してもらうという立場になったことがありませんでしたが、ご協力いただいたアンケートがこんなにも励みになるんだということを実感しています。

 
 過去に書き忘れた「お買いものレビュー」は、古いメールをひっくり返して、まだ書けるものについては全部書きました。

一緒に整理していきましょう。

 最近、「自宅に連れて帰れない場合、葬儀まで何日も待たされることになったら、普通はどうしているのか」というご相談を立て続にお受けしました。
 ご安置できる施設があることを知らず、ずっと心配をされていたようです。ご葬儀の日まで、きちんとご安置できますとご案内し、安心していただきました。

 ご相談では、「常識的なことなのかもしれませんが」とか「こんなことを聞いていいのかわかりませんが」などとおっしゃり、ご心配されていることについて、ご相談者の方が「こんなことを聞いたら恥ずかしいのかもしれない」などと思われているような場面に出くわすことが度々あります。

 ご葬儀のことについては、喪主の立場を何度も経験をする人のほうがめずらしいことです。
 初めて経験される方、また、経験をしたことはあるけれど、何年も前のことでよく覚えていなかったり、状況・環境が変わっていたりするので、わからないことや不安に思うことなどは、あって当然のことで、私たちにとっては、どんなに小さな疑問や要望でも、聞いていただいた方がありがたく思います。

 その時には小さな疑問だと思ってうやむやにしていたことが、いざ、ご葬儀を終えたときに大きなシコリになってしまうということにもなりかねません。
 また、常識的なことといわれていることでも、万人に通用することではない場合もあります。
 
 私たちは、疑問に思っていることやご要望をお聞かせいただき、整理をするためのお手伝いをさせていただいています。
 疑問に思ったことや不安に思っていることは、可能な限りお知らせください。
 
 私たちは、「一度しかないご葬儀に不満を残してほしくない」と思って活動しています。

遺影

 このところ、歌舞伎界を初め、著名人の現役世代の訃報が相次ぎ、ファンならずとも同時代を生きた人達の感慨もひとしおのようです。

 久しぶりの旧友との話題も、お元気な頃の活躍ぶりを思い出し、話の種は尽きませんが、テレビに映し出された遺影を見ていると、一枚の写真に託された気持ちがファンの心に焼付いて、これからもずっと語り継がれていくのではと心強い思いが伝わってくるように感じられました。
 遺影の力は大きいです。

 ご葬儀立会いの節には遺影と必ず一期一会のご対面となりますが、皆様著名人に負けず劣らず、飛び切りの笑顔で最後のお別れをされていらっしゃいます。

 先日も笑顔の素敵な遺影との出会いがありました。
 正装をして写真館で撮ったむりやりの笑顔と違い、同じ正装姿でもあまりに自然な笑顔に、しばらく見入ってしまうほどでした。
 聞けば、息子さんの結婚式の時の写真とか。
 本来ならば、うれしさが溢れている笑顔に、思わず“おめでとう”と声を掛けてしまいそうな写真です。

 しかしながら、当時この笑顔がご自身の遺影になるとは露ほども思わなかったでしょうに・・・。
 それを思うと、60代の若さで亡くなられた無念さが笑顔と二重写しになり、しばしかける言葉も見つかりません。
 それでも、お母様は毅然と微笑んでいます。
 お母様は後に残したご家族に悲しみを見せないように、思い切りの笑顔を見せて旅立たれたように思われます。
 遺影の力は偉大です。

斎場の取材

 先日、お通夜の立会いに伺いました。その際に、一緒に斎場の取材もと思っていたのですが、その日は全ての式場が使われていて、取材どころではなかったので、近い斎場だったことから、日をあらためることにしました。

 数日後、改めてお邪魔させていただいたのですが、斎場の関係者の方は突然の訪問にも関わらず、快く対応してくださり、お話もゆっくり聞かせていただくことができました。
 斎場内や控室の写真撮影も、「ご自由にどうぞ」と許可をいただきました。
勝手にお邪魔して写真を撮っているにもかかわらず、ご葬儀後で控室のお掃除をしていた方にも「これどかした方がいいわね」などのご協力をいただき、無事に斎場取材を終えることができました。

今までにも斎場の取材にお伺いすることが何度もありましたが、関係者の方はとても協力的で、斎場の隅から隅まで案内をしてくれる所もあり、ありがたいかぎりです。

これからも、まだまだ、行かなくてはいけない斎場が沢山あります。
斎場を選ぶ際にセンターのホームページを見ていただく方にとって、わかりやすく、より詳しくご案内できればと思っています。

誰が払う?

 先日、父と何気ない会話をしていた流れで、途中からお葬式の話しになりました。

父「お父さんの葬式は焼くだけでいいよ、なーんにもしなくていい。」
私「いやいや、そうはいかないでしょ。親戚とかご近所さんとかさ。それに、祭壇に飾る写真はこれにしてくれって、写真用意してたから、葬儀をやってもらう気満々なんだと思ってたけど。」
父「○○さんも火葬だけにしてもらうって言ってたし。それでいいよ。」と。

 どうやらご近所の友人たちとの会話の中でも最近は時々自分のお葬式についての話題がでているようです。

父「火葬だけだったら2.3万で済むだろう?」
私「は?????」

 それはどこから仕入れた情報なのか聞いてみると、ご近所さんが、冗談なのか本気で言ったのかはわかりませんが、火葬だけだったらそんなもんでしょと言っていたそうで、それを真に受けていたようです。

 そういえば、今まで何度か葬儀について話しをしたことはありましたが、費用については話しをしたことがなかったかも。

 簡単に説明をすると、「まあ、いくらかかるかはよくわからないけど、おまえが払うんだから好きなようにしていいよ。ま、よろしくな。」と肩をたたかれました。

 そうですか…では、私も頑張りますから、お父さんもあと10年は頑張ってくださいよ!と手を合わせてお願いしました。

 元気なうちに、もう少し、きちんと話しをする必要があるな…と心から思います。

会葬者数を調べるには・・・。

1ヶ月ほど前の新聞の投書欄に、過去数十年の年賀状をひと思いに「燃えるごみ」に出してしまい、中には結婚される前の奥様や生前のお母様をはじめ、大切な方からのものもあり、今では後悔していらっしゃるとの投書が載っていました。

 今更ながら保存方法を考えると、どれを捨て、どれを残していくかを選択し、大切な方の分だけに絞って、名前のあいうえお順にクリアファイルに整理しておけば、いずれ亡くなった時には子供達がファイルを見れば、親の交友関係の一端を知ることが出来るのでは、とありましたが、まさにこれはご葬儀の時にも当てはまる、重要な要素になります。

 ご葬儀での会葬者数の予測を立てる場合に、よく故人様の年賀状の枚数等が引き合いに出されますが、儀礼的な年賀状も多くあり、ご家族が正確な数を読み込むことは難しいようです。
 その点、ご自身で整理されたものがあれば、正確を期することができ、まさに鬼に金棒です。

 ご葬儀では会葬者の人数が分かれば、お食事や返礼品などの他に、場所の設定等の大方のことが決められますが、時としてつかみにくく、ご喪家の方から伺った色々なお話の中から葬儀担当者はある程度の予測を立てながら、当日を迎えることになります。
 おおよその予測範囲内であれば問題はありませんが、時には予想を裏切り、大勢の方々がお見えになったご葬儀に立ち会ったこともありました。

 ご家族・ご親族のみの家族葬のはずでしたが、メール等の伝達手段の発達で、お仕事仲間にご葬儀の情報があっという間に広がり、とるものもとりあえず駆けつけた人達で狭い式場が埋まって、身動きできない程になってしまいました。
 フリーでお仕事をされていらっしゃったので、ご家族は仕事仲間の把握ができなく、予測不可能な状態でしたが、ベテランの担当者の計らいで、駆けつけた方々に故人様とのご対面時間を設け、その分通夜のお清め時間を短くするなど、臨機応変な対応でなんとか事なきを得ました。

 自分のことは自分で・・・。エンディングノートとともに。
 思い立ったが吉日、今年届いた年賀状から早速始めてみましょう。