「先日、叔母の葬儀を家族とごく内輪の親族だけの家族葬で行い、お香典もご辞退とまで言われたが、今や田舎にまでも家族葬が浸透しているのね」
久しぶりにお会いした友人が、開口一番発した近況報告でした。
叔母様も100歳近くのご高齢で、御兄妹はすでに他界され、息子さんにも先立たれ、喪主はお孫さんとのこと。
30代のお孫さんにとってはごく自然のなりゆきだったようですが、600名近くのご会葬者がお見えになられた、20年前の息子さんのご葬儀に出席された他のご親戚の方々にとっては、少なからず複雑な思いが残ったご葬儀でもあったご様子です。
ご自宅でのご葬儀も少なくなり、ご安置先もご自宅以外をご希望される方が多くを占めるようになった昨今では、古くからのお知り合いは別として、ご近所には事後のご連絡で済ませる家族葬の認知度も高まり、益々ご葬儀の本道に近づきつつあるようです。
それに伴い、ご葬儀に直接携わる担当者の裁量如何で、家族葬の良し悪しが大きく左右されてきているようにも思われます。
ご喪家の気持ちをご葬儀の式の中でどれだけ形に表せるか、ご参列いただいたお一人お1人の心に故人様との思い出をどれだけ刻むことができるか、少なくとも手作りで、ご家族には自分たちの手で見送ったという実感を味わせてあげられることが大事な要素となり、会葬者参加型が一つのキーポイントにもなってきています。
その一方で、ちょっとした気配りも重要な要素となりますので、気が抜けられませんとは担当者の弁です。
進行役は司会者にお願いし、ご葬儀中はフリーの身になり、いかにご葬儀に集中するかに掛けているとおっしゃる担当者は、ご喪家からのご要望をお伺いし、言われたことを一つひとつ漏らさず実行することが、ご満足いただけることに繋がるとおっしゃいます。
また、あるベテランの担当者はご住職の読経に始まりご焼香という緊張した儀式から、独自なやり方で一気にアットホームな雰囲気を創り上げていました。
そのギャップに初めは少々戸惑いを覚えましたが、こういうやり方もあるのだといつの間にか納得させられたものです。
最期のお別れでは柩に祭壇のお花を入れる準備の為、一旦全員の退場をお願いしますが、こちらのご葬儀の場合はご着席のまま舞台裏をお見せして、そのまま一気にお花入れに入ります。
葬儀社のスタッフがまだ、祭壇のお花を摘んでいる最中ですが構わず、担当者の「お花を心ゆくまで入れてください」との呼びかけに、ご家族ご親族の皆様はハッと我に返ったように故人様と向き合い、それぞれがお花を抱え、それぞれのお別れをしていらっしゃいました。
そこではお花入れという儀式ではなく、お1人お1人が純粋に別れを惜しんでいる姿が印象的でした。
少々乱暴な言い方になりますが、芝居で言うところの第3幕で転調し、一気に最終場面に持って行く感じにも似ているようです。
勿論、これもベテラン担当者の緩急を心得た、なせる技ですが・・・。
今後、家族葬もそれぞれのご家庭に合わせて、益々変化し続けて行くことでしょう。