お寺の役目は・・・。

 「お寺は町のサロンで、子供達にとっては日曜学校のような場でもあり、いつもお菓子を貰うのが楽しみだった」と九州出身の先輩から戦前のお寺の様子をよく聞かされたものでした。
 本堂は時に児童舞踊の稽古場にもなり、ご住職自ら教えていらっしゃったとのこと。
 
 しかし、お話を伺ってはいましたが、周りのお寺を見渡しても気配すら感じられなく、檀家以外の町の人にとってあまり身近な存在とは言いがたいのではと最近まで傍観者を決め込んでいました。
 
 世の中大きな事件、事故が起こるたびに「宗教家はどうしている」と周りからのシュプレヒコールばかりで、宗教者の沈黙ぶりが目立っていましたが、ここ1年程、さすがに世の中の危機感が肌で感じられるようになったためか、マスコミやネットで紹介されるようになったためか、お坊さんの活動ぶりが一般の人々の目に触れ、知られるようになってきました。

 自殺対策に取り組む方、廃業した温泉旅館をデイケアや訪問介護の拠点にして活動されている方、仕事と家を失った人の駆け込み寺になっている方、各地のお寺で金子みすヾの生涯を演じる方、医学部で教える方、バーのマスターになりお客と語り合う方等々。

 皆さんそれぞれのお立場で葬式仏教と揶揄されるだけではと、誰にでも門戸を開き、また、お寺を飛び出しての布教ぶりが注目され、旗振り役をされているようです。
 
 お葬式や法事だけではないお寺の役目が世間一般に浸透して、点から面になっていくことで、お寺さんも町の人達の意識も双方が変わってくれば、昔のサロンがよみがえってくるかもしれない。
 益々孤独な世の中に、明かりを灯す火種になるのでは・・・。
 また、葬儀の段になってにわかにお寺さんとのご縁を持つのではなく日常的なコミュニケーションが取れれば、お布施のこともおのずとわかり合えて来るのではと少しばかりの期待もしております。 

葬祭市場、昨年は横ばい

 今日は、矢野総合研究所の「葬祭ビジネス市場に関する調査結果2010」の概要をふまえて、私見は今度改めて書くとしまして、葬儀の現状と展望を概観してみたいと思います。

 矢野総合研究所の調査結果によれば、2009年の葬祭ビジネスの市場規模は前年比0.1%増の推計1兆7389億円となっています。高齢化にともなう死亡者数の増加を背景に件数ベースでは拡大基調にあるものの、1件あたりの葬儀規模の縮小などによる葬儀単価の下落により、金額ベースでは横ばいになっています。

 同研究所によれば、現在の葬祭ビジネスの注目すべき動向として、「葬儀の個別化、多様化」「会葬規模の小規模化」「小型葬対応の会館の設置」「低価格葬の登場」を挙げています。

 こうした流れの中で、たとえば、家族葬の増加に伴う会葬者の減少は、料理や粗供養品といった周辺商品の売り上げを押し下げる要因となる一方、少人数葬によって会葬者との関係性が強くなることで、料理や返礼品の質が重視され単価アップが図られる可能性もあると指摘しています。

 同研究所の予測では、10年は前年比4.2%増の1兆8118億円と見ています。個別ニーズに対応した「高額個性型」と「低価格簡素型」という二極化の流れが進み、市場全体では微増傾向が続くと見ています。

満開の桜の思い出は・・・。

 雨にも強風にも負けず今年の関東地方の桜はまだ咲き誇っています。
 日本人の花にまつわる思い出の中でも群を抜いて、桜に勝るものは見当たらないのでは・・・とまで思わせます。
 
 花冷えに震えながらお花見の席取りに駆り出され、朝から冷たいシートに陣取っていた新入社員時代の姿も、時を経れば懐かしい思い出です。

 私も2月に亡くなった友人と都内各所の桜を見て回った思い出がよみがえります。高齢の友人の足腰が丈夫な内にと、毎年千鳥が淵から靖国神社、上野公園、新宿御苑、代々木公園、善福寺川公園、井の頭公園・・・数え上げたらきりがないほどまわりました。
 同じ満開の桜でも場所によって見事なまでに表情が変わり、その場その場にふさわしい立ち振る舞いを見せて楽しませてくれました。

 故人との思い出では4年ほど前の母の葬儀も桜の花とダブります。
 葬儀・告別式も無事終わり、火葬場入口へと向ったバスの中が一瞬にしてホワッと何かに染まったように明るくなりました。
 何事かと窓の外に目をやると、そこは満開の桜のトンネルでした。
 その時初めて今が桜の季節だと気が付き、急に胸が一杯になったことが思い出されます。

 梶井基次郎の短編小説「桜の樹の下には」でも書かれています。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか」

都内では献体される方とのお別れもままならない・・・?

 少し前まで定員割れをしていた献体希望者が、最近では激増傾向にあり、今や順番待ちの状態との報道を度々耳にするようになりました。
 献体をご本人が希望されていても、直前になってご家族ご親族の方からの反対がでるケースも多々あるとのこと、その為か条件もさらに厳しくなっているようです。

 しかし、都内の方の場合は特にその難関を無事潜り抜けて皆様のお役に立てられるとほっとされる前に立ちはだかるものがあります。
 その一つが斎場探しです。
 都内の火葬場併設の式場はそこで火葬することが前提になっております。
 いきおい自社式場を持たない葬儀社さんは他の貸斎場を探さざるを得ない羽目になります。

 先日も「献体が決まっている都内在住の叔父が万一の時、親族や古くからの友達数人と最後のお別れをしたいがどうすればよいか。叔父には兄弟がいるだけで、ご葬儀は祭壇も要らないのですが・・・」というご相談を受けました。
 病院から直接献体先に運ばれる場合以外は、献体でも通常のご葬儀の形式は同じです。
 出棺先が火葬場か献体先の大学病院かの違いだけですが、問題は予算。
 予算を抑えるためにはまず公営斎場を探しますが、区によって有る所、ない所と様々です。
 伺えば、該当する区にはご親族何方もいらっしゃらないとの由。民営の貸斎場はお値段の点で・・・。
 依頼者は川﨑在住の方。
 それではということで結局東京を断念し、川崎市に自社斎場を所有している賛同社をご紹介させていただきました。
 何でもありの東京ですが、その分制約も色々付いてまわるようです。
 東京からの搬送を考慮しても依頼者のお住まい近くでということになりました。

顧客は囲い込めるものなのか

 周りに何人かいる、ポイント妖怪に説得されてしまい、現金での支払いはあまりメリットがないので、はなるべく現金で物やサービスを買わないようになってきました。ポイントはたまり、以後の買い物でポイントを利用すれば、確かにお得です。

 さて、ポイント妖怪に取りつかれて困ることと言えば発行体の違う様々なポイントを管理するのが大変なことのようです。

 しかしながら、何か不便があれば、不便を解消するというように時代が流れるのは法則みたいなものです。
 ポイントでいえば、発行体の違うポイント同士でも、ポイント移行できるようになり、さらには、それを電子マネーに変換できるようになる流れになってきています。まさに、様々なポイントを一つにまとめて、それを現金のように使えるようになる、めでたしめでたしという感じです。

 しかしながら、無理なことは長続きしない、という別の法則もあります。
 ポイントを企業側から見ると違った風景が広がります。
 顧客を囲い込むためにポイント制をもうけたのに、ポイント移行できる状況になればなるほど、ポイントの意味がなくなるじゃないか! (もちろん、中には恩恵を受けるところもありますが)
 しかも、色々なところで、うちのポイントが使え電子マネーにもなるとすれば、ポイント消化率100%近くになって経営を圧迫するじゃないか!
 独自のポイント制をしているところでは、ポイント移行できる状況になればなるほど、自店だけしか使えないポイントは顧客に魅力がなくなってしまうのはないか。

 どのみち、顧客を囲い込ための仕組み作りにポイントを位置づけると、競合他社を上回る高い還元率などを用意し続ける必要があり、互いが疲弊する消耗戦に陥らざるを得ません。

 しかしながら(三度目)、そもそも論としてポイント制度や会員制度によって顧客を囲い込むことなどできるものなのでしょうか? 

 そんな仕組み作りより、商品力やサービス力、ブランド力といった企業の本質的な価値を上げて顧客を増やすしかないような気もします。

 ちなみに、ポイント制はありませんが、葬儀社でも会員制をしているところはたくさんあります。しかし、顧客の囲い込みに大いに成功したという事例を聞きません。

香典の代わりにお花だけでもいいですか・・・?

 冠婚葬祭マナーに関することは本やインターネットでの紹介等でも沢山出回っていますが、皆さんご自分の場合に照らし合わせると、微妙に食い違いが出てくるようで、そこが一番問題になるようです。
 実際にご葬儀の場に立ち会うと、そこは人間社会のしがらみやらお付き合いで、マナー本の様には行かない場面にいろいろと出くわします。

 先日も深夜「インターネットで調べたら香典と供花はどちらか一つでいいとなっていますがよろしいですか」とのお電話を頂きました。
 伺えば、明日の叔父さんのご葬儀にお香典の代わりとして、供花をご夫婦連名で出したいご様子です。
 確かに、香典は故人のご冥福をお祈りして香をささげる代わりにお包みするもので、供花も同じように故人を偲び、供養するためにささげるお花ですので、二重にお供えする形になり、どちらか一方をお供えすればよいのではということになります。
 
 でも、とあえて言いますと、お身内の間ではお付き合いの度合いもありますが、お香典とお花は双方ともお願いしたいと思います。
 どうしても片方とおっしゃればお花よりもお香典が先に来るのでは・・・。
 と申しますのも、ご自身の希望より、まずはご喪家の立場に立ってお考えいただくのがよろしいのではないでしょうか。
 ご親戚以外でしたら、マナー本のようにどちらかでも構わないと思いますが・・・。
 勿論、供花はご夫婦連名で構いません。

直葬は様々な顔を持っている・・・。

 昨年来からマスコミでも取り上げられ都会を中心に増えてきた直葬。
 火葬のみと言われ、通常の通夜、葬儀・告別式を省いて死後24時間を経たご遺体を、直接火葬するやり方ですが、一口に直葬と言ってもお別れの仕方は様々です。

 例えば、こちらで火葬にされ、ご遺骨で地方にお帰りになってご葬儀をされる方。
 病院から一旦ご自宅に戻り、最後の夜をご家族に見守られ過ごされる方。
 ご自宅での最期を迎え、そのままお迎えに来るまでご家族とご一緒の方。
 病院から火葬場に直行され、お別れ室や炉前であわただしく読経しお別れをされる方。
 病院から一旦葬儀社の安置所に搬送され、安置所でゆっくりお別れができる方と千差万別です。
 
 一昨年位までは特別なことのように思われていた節がありますが、テレビ・ラジオで盛んに紹介され、世間に認知され始めると瞬く間に広がり、葬儀社によってはかなりのパーセントを占めるとまで言われています。

 当センターでも直葬を望まれる方が目立ってきて、アンケートで頂いた回答の中にも、様々なご事情が伺えます。
 生後間もないお子さんをご自宅で亡くされた方は、よく分らないことばかりだったので葬儀社の担当者に相談に乗ってもらい、少しおせっかいくらいに親身になって貰ったとのこと。
 また、通夜、葬儀は青森のご実家で執り行うので、火葬のみにされた方。
 長年の介護で手元資金の余裕がなく、ネット検索で費用負担をかけずに行う為の相談窓口としてご相談された方。
 50万円のお布施代はお出しになったが、葬儀社に無駄な費用は払いたくないとおっしゃる方や特別室での火葬、大理石の骨壷にこだわった方。
 形ばかりが先行する葬儀のやり方にどうしても納得がいかず、最も身近な者だけの義理のない、静かで安らかな気持で見送りたいという思いを担当者が汲んでくれ、それを実に的確に捉えてことを運んでくれたことに感謝している方等、都会生活の縮図がそのまま映し出された形が見えてくるようです。

ご葬儀にも主婦パワーが発揮される時代がやってくる・・・。 

 右を向いても左を向いても不景気風に呑み込まれそうな中で、怖いもの知らずに突き進められる一群がいます。
 そうです。強行突破ができるのは一家の大黒柱のお母さん。
 主婦軍団です。
 最近は様々な場面に顔をのぞかせていますが、ご葬儀の分野でも主婦パワーを発揮される方が出てきています。
 ご葬儀がより儀式化される一方で、家族葬のようにご家族・ご親族のみ、親しい人たちだけの中で日常の延長上として執り行いたい方も多く、それには生活者の目を持った主婦が打って付けなのでは。

 昨年末伺った東京近郊の式場でも取り仕切っているのは、3年前まで専業主婦でしたと言うお母さん。
 以前は田んぼだった土地を遺産相続で宅地にし、跡地を斎場にと思いついたのです。
 というのも周りにはご葬儀をする場所が無く、遠方の公営斎場まで足を運んでいる現状を見ていたことから、倉庫やアパート経営よりもと考えついたのですが、それからが大変だったようです。
 いつの間にか火葬場ができるという噂が先行し、ご近所の大反対にあってしまったが3年がかりで説得し、葬儀社の方々に尋ねながら、使い勝手のよいこだわりの式場を完成させました。
 さらに建てたからには葬儀のことを知らなくてはと葬儀社に手伝いに行き、式場のみならず、いつの間にかご自身も葬儀社を立ち上げてしまわれた。
 まだまだ駆け出しですからとは言え、10年後が楽しみなパワフル母さんです。

今年のご葬儀は日にち最優先の傾向あり・・・?

 松の内もあっという間に過ぎ、お正月はずっと以前に終ってしまったかの様に見えますが、まだまだ余韻を残しているのが火葬場です。
 場所によってばらつきはありますが、暮の内に消化できなかった分、お正月にお亡くなりになられた分が尾を引いて、式場だけでなく火葬場まで1週間待ちの状態でご迷惑をお掛けしてしまいました。

 今月いっぱいまでは少し難しいかもしれないが・・・と楽観視されていた方が急変され、お亡くなりになられたが、ご遺族はお仕事の関係もあり、どうしても日にちが待てないとのこと。
 日にち最優先とはいえ、火葬場の塞がりはいかんともしがたく、ご相談に乗っていた葬儀社さんもお手上げ状態のため、今はどなたもいらっしゃらない遠く離れた故人のご自宅のある地域の葬儀社さんにバトンタッチして、なんとか事なきを得ました。
 今までご葬儀の日取りは比較的ゆるやかに組まれても大丈夫な場合が多く、むしろご予算の関係を重視されていたが、今年はご予算もさる事ながら、厳しい世の中、仕事の関係などで日程がより優先される傾向が強まるのでは・・・と予感します。
 お正月のような特殊な状況を除き、火葬場の待ち具合は心配ありませんが、早期の公営式場確保はさらに困難な状況になるのでは。

 以前関西の会社の方から東京支社の葬儀に関して首都圏ではご葬儀に3日4日とかかるのは当たり前になってきているといわれますが本当ですかと問われたことがありましたが、今年はより厳しくなるのでは・・・。

ご葬儀におけるご親戚との関係は・・・?

 最近のご相談の中で、ご親族にご高齢の方が多く、できれば通夜と告別式に2度足を運ばせるよりは1日葬で済ませたい。
 しかし、通夜もやらず夜通しお線香の火を絶やさないこともしないとなるとご親戚の方達を説得する自信が無い。
 また、長患いで半年以上留守になっている家には帰したくないが、親戚からなぜ自宅に帰せないかと問い詰められそうで心配だ、とご親族との間が気がかりなご報告を受けました。
 ご親戚の心配は身内なだけにかえって面倒で、なかなか一筋縄ではいかないようです。
 
 ここ2~3年、都会を中心にご家族・ご親族を中心とした家族葬という言葉が当たり前のように使われてきていますが、最近はより厳選され、ご家族のみでお見送りしたいとご希望されるケースも多くなってきています。
 遠方の普段余り交流の無いご親戚にはご葬儀後お知らせすることでご了承願おうという傾向のようです。

 1年ほど前に頂いたお手紙が思い出されます。
 その方も、始め故人の意思を尊重され、ご家族のみのご葬儀を希望されていましたが、当センターのホームページの「おまいりしたい人の気持ちも酌んであげることも大切のくだりがずっと頭の片隅にこびり付いて、結果、『お見舞いも拒否され(体調不安定のため)、最期のお別れもできないなんて、つらすぎる』との親戚の言葉に『どうぞ、お願いします。来てください』と言えたのが一生の悔いを残さずにすみました」。

「血縁のあるなしにかかわらず、父にお別れをしたい人だけが集まってくれ、私たちに気を使わせることなく、数々の至らなさにも目をつぶって、励まし、慰めてくれました。また、通夜の晩は遠方からの会葬者も多く、大広間に貸布団を敷きつめ、合宿所のような一晩は父が皆をより一層仲良くさせてくれた時間に思えます。翌朝バケツリレーのように次々とお布団の山が築かれたのは圧巻でした。涙も笑いもあるご葬儀でした」とのご報告をいただき、おもわず、我がことのようにうれしく感じたものでした。