ご葬儀は搬送先を決めるところから始まる

 「今、母が病院で息を引き取ったばかりなのですが・・・・。八王子の葬儀社さんを紹介してください」緊張しきった声が受話器から聞えてきました。
 すぐさま、現在の状況を聞き、搬送する先をまずお伺いして、賛同社の葬儀社に連絡をとり病院までのおおよその時間を先方にお伝えすると、電話口にほっとしたような空気が流れました。
 病院での処置に時間が掛かることもありますので、依頼者には直接葬儀社の方にご連絡をお願いしています。
 搬送先はご自宅かご自宅以外の場合になります。昨今、都会を中心に住宅事情やプライバシーの問題等がでてきて、自宅以外にお願いすることが圧倒的に多くなってきました。
 ご自宅への搬送で一戸建ての家は問題ありませんが、マンション、アパートの場合は階数とエレベーター内部の鍵の有無を管理人さんに確認を取っておく必要があります。
 搬送は時間を選びませんので深夜の場合エレベーターの鍵の確保が重要です。エレベーターでご遺体を運ぶ場合、ストレッチャーを低くして奥に突っ込むような形になります。エレベーターがない場合、ご遺体を上の階まで運ぶことになり、階段が狭いと難しい場合があります。
 葬儀社の担当者は異口同音に「長い間ご自宅から離れていらっしゃったから、出来れば一度お連れしてください」とのことですが、なかなか難しいようです。
 ご自宅以外の場合は葬儀社所有の安置所や一時預かりの安置所、民営斎場の安置所、公営斎場の安置所などがあり、納棺との問題も絡んできます。特に公営の安置所はご遺体を柩に納めた状態でないと受け付けないところが多いので、一旦別な安置所で納棺するようになります。病院に
よっては病院で納棺してくれるところもあります。民営斎場の場合は納棺は自由です。
 目黒区の大圓寺斎場のように、出棺直前まで、ご遺体をお蒲団の上に安置することが出来る斎場もあります。
 ご遺族の気が動転しているなか、葬儀の準備は着々と始まっています。
 

ご遺骨を安置しておける施設が納骨堂です。

 当センターは葬儀社の紹介をするのですが、相談の中で葬儀後の納骨の話になることもあります。今日は、名前は聞いたことはあしそうですが、どういったところなのかよく知られていない、納骨堂について書いてみます。

 お墓や火葬に関する基本的な法律が「墓地、埋葬等に関する法律」(略して「墓埋法」と呼ばれています)です。
 その中に、納骨堂とは、「他人の委託を受けて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう」となっています。
 要するに、納骨堂とは、遺骨を安置しておくことができる施設です。

 納骨堂はもともと墓地に埋葬するまで、一時的に遺骨を預かってもらうといったものが多かったため、一般的には預かり期間が定められています。ただ、更新可能で期間延長ができる納骨堂がほとんどです。この延長線上で、最近では、納骨堂を一時的なものとはせずに永代供養の場として利用したいというニーズに応え、永代供養墓を兼ね備えた施設も出てきています。

 納骨堂自体は、コインロッカーのような形態が多く、抵抗を感じる人も多いようですが、最近ではそういった感覚も考慮した、立派なものも増えてきています。そのほか、仏壇の形になっているものや、通常のお墓と同じものが屋内に設置されている形態など最近では出てきています。

 また例えば、お墓がないので、骨壷を自宅に安置せざるを得ないと思っている人も少なからずいます。納骨堂という形態が一般的にあまりよく理解されていなことがあるのでしょうが、納骨堂は、このような悩みを抱えている人の選択肢のひとつにもなるでしょう。特に公営の納骨堂は、細かい利用条件などが付いている場合もありますが、利用できれば廉価です。
 納骨堂にも一般の墓地と同じように、公営や民営のものがあります。

 納骨堂は土地を効率よく使用しているため、都心部であっても比較的費用がかからず遺骨を納めることができるようになっています。また、屋内スペースなので雑草を手入れするなど掃除の必要もありません。
 ただ、反面、自分たちのスペースではないということから、お花や供え物を自由に行えなかったり、共同の参拝施設が設置されていて、供養はその場所で行わなければならないなどの制約もあります。

 預かり期間や形態だけではなく、管理や供養、費用も様々ですので、それぞれの事情を踏まえて、さらには、それぞれ具体的な納骨堂の特徴の2つを合わせて考えることが必要です。

プロテスタントの告別式に伺ってみると・・・。

 キリスト教関係の葬儀は通常、信者として通っている教会で、担当の牧師さんの手で行われることが多いのですが、プロテスタントの場合は諸般の事情で他の教会、式場で執り行われることも増えてきたようです。先日のプロテスタントの葬儀も故人が通っていらした教会ではなく、別な教会を使用しました。
また、今年はじめに伺った葬儀では、区営の斎場を使用していました。
 キリスト教でもプロテスタントの場合は比較的規則が緩く、式も日本独自の習わしにそって行われます。
 日本式の通夜にあたるものをカソリックでは通夜の集い、プロテスタントでは前夜式と呼ばれ、牧師さんの司会進行により執り行われます。
 前夜式も通夜同様、近年参列者が多く、葬儀にこられない会葬者のために、告別式に準じた内容になります。
 告別式を例にとりますと、まず定刻前に会葬者が着席し、ご喪家の方々をお迎えします。
 オルガン演奏の中、司会の牧師さんのご挨拶から始まり、賛美歌合唱、ご喪家による故人の略歴紹介、聖書朗読、牧師さんの式辞、友人代表のお別れの言葉、賛美歌合唱、喪主の挨拶、仏式の焼香にあたる献花へと続きます。
 所要時間は仏式、神式と同じ1時間以内に収められます。特に仏式との違いは賛美歌合唱の
会葬者参加型にあると思われます。
 最後に、柩にお花を入れるお別れの儀は宗教を問わず行われます。
 白一色のお花は出席した方々に鮮烈な印象を与えたようです。

葬儀にまつわるお金の問題

冠婚葬祭は日々の生活の中で、最も出費の多い出来事です。結婚式はそれに向けて蓄えられているので楽しい計画が練れますが、問題は葬儀の方です。葬儀費用を残す間もなく逝ってしまわれた方、長患いで使い果たしてしまった方、残されたご遺族には、それぞれ切実な問題が迫っています。
 依頼者からのご相談のなかでも、避けて通れない問題です。
 「病院でお金を使ってしまったので、出来るだけシンプルな葬儀をしたい。家族と親族15名位の家族葬で、お坊さんも呼ばず、自分がお経が読めるのでそれで間に合わせてもよい位。通夜の料理のみで祭壇も要らない。お花が大好きだったので柩の周りをお花で飾る位で良い」との依頼者のご注文に、地域の葬儀社でぎりぎりの予算で快く引き受けてくれる当センターの賛同社に見積りを依頼するところから金銭の問題は始まります。
 葬儀当日にご喪家から直接支払う斎場費、火葬料、待合室料等がありますので、多額な現金の用意が必要になってきます。葬儀社によっては全て立替払いのところもあります。
 銀行は故人になったことが分かった時点で、故人名義の預貯金は凍結してしまいますので注意が必要です。
 凍結されてからでは相続人全員の同意が必要になってしまいます。
 分かった時点というのが少し曖昧で、申告するまでは大丈夫ですが、ある方の場合は銀行に行って近所の方にバッタリお会いしご挨拶されて、お亡くなりになったことが分かってしまいすぐに下ろすことができなくなってしまったとのことです。
 銀行サイドでは「新聞の死亡欄にのった方、テレビラジオ等でお名前が分かった方はその時点で凍結されます」とのことです。一般の方はあまりナーバスになる必要はないようですが、万が一のことを考え、事前に引き出す用意も重要です。
 
 

大事なのは対話する能力です。

 当センターには、賛同社になりたいと言って、数多くの葬儀社さんが来られます。
 どういう話をされるかも人それぞれで、パンフレット持参でひとつづつ説明される方、業界のあり方に批評をする方、集客についてノウハウを開示する人、会社設立の思いを熱く語られる方、人それぞれです。

 そんな中、ふと気付くと、私自身が気持ちよく語ってしまっている場合があります。これは、相手の人がうまく私の話を引き出しているということでしょう。

 葬儀における、葬儀社の担当者と依頼者の場合にあてはめてみましょう。 

 自分の会社のこと、商品のことを説明するのは非常に大事なことです(このことさえできないところもあるでしょうが)。しかしそればっかりではご依頼者は不快な思いをするでしょう。

 なぜなら、商品や会社自体には関心はないからです。関心があるのは、自分のいまのこの状況を、どのようにしたらよりよく乗り越えていけるのか、ということだけです。この関心を置き去りにして、熱心に商品説明しても、いや、熱心にすればするほど、押し売りみたくなってしまうでしょう。

 この関心をうまく聞き出して理解し、その上で、この商品がどのように役立つのか、を説明してはじめて、ご依頼者は満足するのではないでしょうか。

 そのためには、当たり前のことですが、ご依頼者により多くを語ってもらえるようにしなければなりません。

 何はともあれ、対話する能力は非常に大事なものだと思って、葬儀社さんの担当者と話すときも見ています。

先ずは菩提寺さんにお伺いを立てましょう

 菩提寺をお持ちの方は病院からご遺体を搬送後、先ず始め菩提寺にお知らせし、ご住職から指示を仰ぐ。
 建前的にはそのような形をとることが望ましいが、現実その時点ですでにご喪家は葬儀社を決めていることの方が多い。
 自宅で葬儀をする方が大半の頃は、まずはご住職に伺いを立て、地元地域の古参が陣頭指揮をして、葬儀社の担当者は黒子に徹しているように見受けられました。
 
 しかし、昨今都会を中心に斎場でのセレモニー型が大方を占めるようになると、ご喪家の意向を汲みとって式進行をする葬儀社の担当者の役割が格段に大きくなってきています。
 突然のように訪れるご不幸に、何から手をつけてよいのか途方にくれてしまうのが現状で、頼みの綱は葬儀社の担当者です。気心の合った担当者にめぐり合え、気持も落着いて式に臨むことができると安心した矢先に、思わぬところから待ったが掛けられることがあります。
 
「菩提寺さん」です。
 菩提寺の中には葬儀社を指定してくる方がいらっしゃいます。
 菩提寺との普段の付き合いも薄いので、戸惑われる方も多いと思いますが、ご住職から断固として決められると、すでにご喪家が決めた葬儀社も撤退せざるを得ません。
 葬儀社の担当者も「これからずっとお付き合いするご喪家にとってそれがベターだと思いますから」と、菩提寺がある場合は必ず確認をするとのことでした。
 菩提寺とのトラブルは最も避けたい問題ですので、「ご喪家から菩提寺を聞いたら先ずはご挨拶に伺うようにしています」とは葬儀社の担当者の弁でした。
 このようなケースは特に菩提寺を借りてやる場合に多いようです。

 

斎場選びは思い出の地としてできるだけ家の近くを希望する

 少し前までお葬式は自宅でするものだという思いが強かったのですが、いつの間にか今や都市部を中心に、大方自宅以外の式場に場所が移ってしまった感があります。
 それを都会の住宅事情や近所付き合いの希薄さなど色々な煩わしさの所為にしていますが、いざとなるとそれでも地域とのつながりは心の拠り所としてあるようです。
 葬儀社の担当者が何ヶ所かの斎場を提案した場合、家の近くを希望される方が多いと聞きます。
 
 最近立会いに伺ったご葬儀も斎場選びの第一条件は近所でした。通夜のお清めに近所の方の手作りの料理が運び込まれ、葬儀社が手配したのはメインのお寿司と飲み物だけでしたので、予想外の会葬者数になっても追加が間に合ったとのことでした。
 
 港区のやすらぎ会館でのご葬儀の場合は、依頼者の方が始め池袋方面の斎場を希望されていたのですが、自宅が西麻布ということで、葬儀社の担当者が参考までにと提案したこちらが、実は小学校の通り道にあり、故人のお母様にも懐かしい所だからと急遽変更されたいきさつがありました。
 
 国分寺のきわだ斎場でのご葬儀の場合は、依頼者のご指定でした。永年近所に住み、故人が子供の頃境内で遊んだ思い出の場所だそうです。
 故人の永年の散歩コースになっていた、つつじヶ丘の金龍寺でのご葬儀の場合は、霊柩車がまわり道をして、同じ町内の自宅前を通って火葬場に向われました。
 
 
 

ご葬儀も親しい方をお招きするというスタンスから、お花とお料理の質が大切です

 「親戚と親しかった方のみで見送りたい」とお身内だけの葬儀を希望されていらっしゃるご喪家のなかで、「お花とお食事だけはお見えになった方々に満足していただけるものを」と
おっしゃる方が特に増えているようです。
 どうしても儀式中心になりやすい一般葬に比べ、生前の故人をよくご存知の方々に、ゆっくりと最後のお別れをしていただきたいと言うスタンスをはっきり打ち出している分、ご喪家側もお客様を接待するというニュアンスも含まれているように思われます。
 特にお食事に力をいれる葬儀社の担当者も増えてきているようです。
 先日葬儀をお願いした埼玉地域の担当者も永年の間に60社位の仕出屋さんと付き合った結果、なんと東京を飛び越えて横浜の業者の方にお願いしているとのことでした。
 さすがに、当センターのアンケートにもご喪家側から「大変美味しく、お客様からもお褒めの言葉を頂きました」と回答が寄せられていました。
 最近では従来の仕出屋さんのお料理というよりも、ホテルの宴会場のように温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たい状態でお出しする業者の方も出てきているようです。
 但し、ある担当者は腕のいい本職のお寿司屋さんにお願いしたが、通夜の時間のタイミングがずれて、カラカラになり折角のお寿司が台無しになってしまった苦い経験もあるとのことでした。
 後から仕出屋さんに聞くとこの時のお寿司の種類に問題ありとか・・・。
 ある程度、餅は餅屋のこともありますとのことでした。
 

手元供養を知っていますか?

 ご遺骨をどうするかについて、お墓以外の選択肢として、最近注目を集めているのが、手元供養です。手元供養は、遺骨を納めたり加工したりして身近において置けるものです。

「手元供養品は、最愛の方の遺骨を身近に置くことで、心のよりどころとなり、手を合わせ、或いは握りしめ、故人を偲び、語りかけられる自由なかたちの自宅での供養対象です。」というのは、NPO手元供養協会の解説です。

 具体的な商品群としては、大きく分けて、遺骨をペンダントやオブジェの一部分に納骨するタイプと、遺骨そのものを加工してダイヤモンドやプレートに成型して、ペンダントやオブジェにしたものがあります。こうした商品が出だしてきたのも、それほど遠い昔ではなく、手元供養品のパイオニア的存在と言われる「エターナルプレート」が販売されだしたのが、1999年です。NPO手元供養協会ができたのは、2005年のことです。

 時代背景としては、お墓が田舎にあり遠かったり、家に仏壇がなかったり、経済的事情でお墓が立てられなかったり、散骨してしまうなどの状況があるからでしょう。

 もっとも、手元供養という言葉ができたのは最近ですが、骨壷などを身近に置いておく人は、昔からいましたので、手元供養のようなことは行われていました。
永六輔さんの「二度目の大往生」と「終―大往生その後」という本の中には、作家の住井すゑさんは、ご主人の墓をつくらず、骨壷をいつも抱けるところにおいているという話がでています。

 ちなみに、遺骨はお墓に入れなくてはならないという法律はないので、身近に置くことは何ら問題ありません(ただ、家族以外の他人の遺骨を預かることができるのは、都道府県知事の許可がある施設に限られています)。

 「お墓に入りたくない人、入れない人のために」(徳留佳之・著、はまの出版、1500円)という本の中で紹介していますが、現状、手元供養品を買い求める人は、子供を亡くした親がつくるケースが多いようです。

 手元供養品だけで、完結させてしまうというよりも、お墓や散骨と組み合わせるという形になることのほうが多いかもしれません。

「依頼者のご要望に合わせてパンフレットを使い分けます」と聞かされて・・・

 ある葬儀社の担当者から「当社にはパンフレットが低価格用のものと一般の葬儀用のものとあり、使い分けています」と伺った時には、戸惑い思わず聞き返してしまいました。
 実は担当者は警察から頼まれる葬儀にも関係していて、ご喪家から「お葬式を出すお金がない」という相談を受けることが多いとのことでした。
 「どうしても安くやりたいと相談されると断れなくて、ついいいですよということになってしまうんですよ。金銭的に厳しくて火葬だけしかできないのでは忍びない。何とかしてあげたいということから、こういうことになったのですよ。この方達にいきなり40万、50万の祭壇のパンフレットをお見せすればビックリされてしまいますから」。
 火葬費用にも満たない金額で泣き付かれた時には、知り合いのご住職に事情を話して快く引き受けて貰い、終わった後にご喪家の方は涙して喜ばれたようです。
 
 「また逆に、値段の安い祭壇のパンフレットを見て、何だそれしかないのかと言うような方には別な一般用のパンフレットをお見せしています」とのことでした。