仏式のご葬儀の場合、菩提寺サイドでは通夜、葬儀・告別式の一連の流れに本義があり、直葬、1日葬への省略は難しいとも言われてきましたが、最近ではご喪家の事情を汲み取り、ご相談によっては臨機応変な対応も考慮されてきているようです。
先日も当初、ご自宅のある横浜では火葬のみで済ませ、後に田舎の菩提寺にて骨葬を予定しているとのご相談でしたが、1ヶ月後のご葬儀では横浜での1日葬へと変更されました。
喪主になられるお母様は足が不自由な上に、軽い認知症の症状もおありになるとのことで、遠路菩提寺までお連れするのは難しい状況をご住職にお話しされ、ご相談の結果、ご住職自ら横浜にお越しいただき、横浜での1日葬と相成りました。
一方、都心に菩提寺をお持ちのシングルマザーの方からのご相談は、危篤状態に陥ったお母様には年金もなく、ご自身も1人っ子でご葬儀を執り行う余裕もないとの切羽詰まったものでした。
ご自身の蓄えもなく、小さなお子様お2人を育てながらローンを抱え、金銭的にかなり厳しい状況にあることを率直にお話いただきました。
ご相談される方がどなたもいらっしゃらないとのことで、まずは菩提寺のご住職にありのままを申し上げることをお勧めしたところ、3日後「あれから、意を決して申し上げたところ、そのような理由でしたら、戒名のことも含め、火葬が終ってからご相談に乗りましょうとおっしゃっていただけました」とのご報告が入りました。
第1関門を突破した安堵感が電話口からも伝わって、お聞きしている当方も思わず力が入ってしまう程でした。
また、以前千葉の肝っ玉母さんと呼ばれていた担当者からこんなエピソードも伺いました。
ご葬儀のご依頼を受け、「先ず初めに菩提寺には丁寧にご連絡をお願いします」と申し上げましたが、若い喪主様はFAXで連絡され、騒ぎの発端はここから始まったとの由。
FAXで事の次第を初めて知ったご住職は、地域の葬儀を取り仕切っていた菩提寺にご遺族が直ちに出向くのが当然との思いがあり、菩提寺にお伺いを立ててからご葬儀の段取りを決める手筈なのに、勝手に葬儀社を決めてしまい、しかもFAXでの事後報告には完全におかんむりの御様子です。
枕経の当日、担当者もご挨拶に伺いましたが、ご住職からは枕経が終わるや否や「葬儀社は俺の知り合いでなければ」と怒鳴り散らされ、あまりの剣幕に喪主のお母様は泣き出す始末・・・。
担当者も「お経を途中で終わらせてはいけないので、降ろさせていただきます」とまで申し出ると、今度は見積書を見せろと迫り、ご喪家の状況を踏まえ、出来るだけ費用を抑えた見積りを目にするや否や、「こんな安い仕事は出来ない」と怒鳴り散らす。
罵詈雑言を浴びせられた喪主のご子息も途方に暮れるばかり。
ついには「こんなに安くては明日の葬儀には行かない」とまでエスカレート。
担当者が根気強く説得するうちに「お宅はどんな葬儀社さんだ」と矛先がかわり、今度は一転してご住職の方から身の上話が切り出される始末。
息を詰めて事の成り行きを見守っていたご親族はあっけにとられているご様子でしたが、いつの間にかご住職から「安い葬儀があったらそちらに回すか」とまでの友好ムードに変身し、「帰りは会社まで送っていく」との申し出がなされた由。
一旦は丁重にお断りいたしましたが、仲直りの為にも同乗させていただいたとのことです。
疎遠ぎみの菩提寺との意思の疎通も大切です。