柩を祭壇前に置くのはルール違反か・・・?

 仏式のご葬儀に立ち会って祭壇の前に柩が置かれているのをごく普通の光景のように捉えていましたが、柩は祭壇の後の高い位置に安置されるのが正式だそうです。

 しかし現実、斎場の祭壇スペースの問題や会葬者の方々が故人とのご対面を希望され、柩に近寄ってご面会し易いようにするために、祭壇の前に置かれるケースが多くなってきているのも事実です。

 以前ですと、ご自宅での葬儀・告別式が多く、ご面会はご家族・ご親族に限られ、すでに納棺の前にお会いされていて、後はご出棺前に最後のお別れをされるだけでしたので、最近のようなご対面のために気遣う必要なかったとお聞きしました。

 一方、斎場の祭壇両脇は供花が並び、祭壇後にご安置するスペースの確保も難しい状態では、前にご安置せざるをえない状況もあります。
 さらに、宗派を問わない生花祭壇の普及が輪を掛けているようにも思われます。
 別な見方をすれば、柩を生花祭壇の前に出して、むしろ、宗教色を薄め、故人を中心としたアットホームな雰囲気のご葬儀を希望されていく傾向が見受けられるようです。
 
 それでも祭壇の最上段に飾られたご本尊の前に柩を置くのは本末転倒ではないかと読経されるご住職から苦言を呈されそうですが・・・。

弔電は残された家族の癒しにもなります・・・。

 電話口で「○○さんのご葬儀は何時からですか」といきなり聞かれることが度々あります。
 えぇ・・何かの間違いでは・・・? 気を取り直して事情を伺うと、弔電を打ちたいのでお式の時間が知りたいとのこと。慣れないことで戸惑われていらっしゃるようです。
 そういえば、最近では日常生活に電報を打つ機会なんてめったにお目にかかりません。
ましてご葬儀のように特殊な状況下ではどんな文面にしたらよいのか、迷ったあげく、差し出された例文をそのまま引用されるケースが多く見受けられるようです。

 というのも、今まで多くのご葬儀に立会いましたが、ご葬儀には弔電は付き物とばかりに用意された儀礼的な文面ばかりが目立ち、あまり思いやりが感じられませんでした。
 いつの間にか弔電は葬儀・告別式が終ってほっとした会場の空気の中で、おもむろに司会者が読み上げる、一つの儀式という認識位しかもてなくなっていました。
公的な社葬や合同葬ならいざ知らず、家族葬のような内々のご葬儀まで同じで、その部分だけを妙によそよそしく感じていました。

 そんな折、立ち会ったご葬儀で菩提寺のご住職の読経が通常より10分ほど長引くことが分り、急遽ご喪家の了解のもと、弔電を全てカットすることになりました。
 葬儀・告別式が無事終り、安堵の空気が流れるも、いつもの弔電は読まれません。
 最後のお花入れの儀とあわただしく移行していきます。
 故人やご喪家の方々への哀悼の辞を表する間がなく、お別れの儀をしていても、何か忘れ物をしたような錯覚を覚え、少々慌てました。
 思いがけないところで弔電の役目を見つけ、弔電のよさも少し見直しました。

ご葬儀の形式は変われども、血のつながりは別格です・・・。

 当センターでは依頼者からメールや電話で事前のご相談を受け、やりとりをさせていただいた後、ご希望の方法でセンターの賛同社をご紹介しておりますが、時としてやりとりの途中で依頼者から突然お詫びの連絡を頂くこともあります。

 それは、身近な方が途方に暮れている姿を見るに見兼ねて、周りの方がご相談を持ちかけてきた時などにみられるようです。
 依頼者の方から実の兄弟同然の付き合いをしてきた妹さんのご主人が危ない状態なので、疲労困憊の妹さんに代わってご相談したいとのご連絡を頂きました。
 しかし、メールでのやり取りの途中でご主人のご兄弟、ご親戚筋から異論が出てきたようです。
 間に入った妹さんが動揺してしまっているのでこのご相談はしばらく中断させてほしいとの申し出を受けましたが、後日丁重なお詫びのご連絡を頂きました。
 よかれと思ってしたことが、周りを混乱させてしまい、血のつながりの無い者が勝手にことを進めて・・・ということになってしまったようです。

 ベテランの葬儀社の担当者が以前話していたことを思い出しました。
 「なにしろ、お嫁さんは嫁ぎ先のことには口を挟まないのが鉄則よ」
 ご主人のことでも奥様の一存だけでは難しいようですね。
 まして、どんなに親しいとはいえ門外漢においておやです。
 ご葬儀の形式は家族葬だ、直葬だと変わってきても、中を流れる血のつながりは別格のようです。

便りの無いのは良い知らせ・・・?

麦藁帽子をかぶった白い服の少女がスケッチブックを片手にお花畑をゆっくりと歩いています。
小さな絵葉書の中の少女は後姿でもその凛とした空気が伝わってきます。
手元の絵葉書は2年程前に生前相談の折、いただいた方の自画像かもしれません。
お手紙でのやりとりに、その少女の姿がダブって見えました。
 以後、まだお便りは頂いておりません。お元気な証拠だと思います。

「その時は自分自身がもうすでに一生が終って何一つ そのことにたずさわることもございませんわけですのに、客観的に冷静に考えられまして、妙にすっきりいたしました。」
 お見積りを取り、生前予約をされた時のお手紙の一部です。
ご自身の生き方を問い、最期をどうされたいのかをお決めになることでそれがバネになって残された時間をお元気に過ごされていらっしゃるのでは・・・。

 この方のように最期をどのようにされたいのか身の処し方をご自分で決められ、自身のご葬儀のご希望を相談される方がポツポツと増えてきています。
 70代を中心に、まだまだお元気なうちにと80代、親を見送り還暦を迎えた団塊世代まで。
 それでも以前30歳の方のご相談には、さすがの担当者も「僕の方が先に逝ってしまうよ」と絶句されていましたが・・・。

香典の代わりにお花だけでもいいですか・・・?

 冠婚葬祭マナーに関することは本やインターネットでの紹介等でも沢山出回っていますが、皆さんご自分の場合に照らし合わせると、微妙に食い違いが出てくるようで、そこが一番問題になるようです。
 実際にご葬儀の場に立ち会うと、そこは人間社会のしがらみやらお付き合いで、マナー本の様には行かない場面にいろいろと出くわします。

 先日も深夜「インターネットで調べたら香典と供花はどちらか一つでいいとなっていますがよろしいですか」とのお電話を頂きました。
 伺えば、明日の叔父さんのご葬儀にお香典の代わりとして、供花をご夫婦連名で出したいご様子です。
 確かに、香典は故人のご冥福をお祈りして香をささげる代わりにお包みするもので、供花も同じように故人を偲び、供養するためにささげるお花ですので、二重にお供えする形になり、どちらか一方をお供えすればよいのではということになります。
 
 でも、とあえて言いますと、お身内の間ではお付き合いの度合いもありますが、お香典とお花は双方ともお願いしたいと思います。
 どうしても片方とおっしゃればお花よりもお香典が先に来るのでは・・・。
 と申しますのも、ご自身の希望より、まずはご喪家の立場に立ってお考えいただくのがよろしいのではないでしょうか。
 ご親戚以外でしたら、マナー本のようにどちらかでも構わないと思いますが・・・。
 勿論、供花はご夫婦連名で構いません。

ポピュラーになった家族葬こそ担当者の腕の見せ所です。

 「家族葬」と言う言葉が世間の話題に上るようにやったのはまだそんな前ではないが、いつの間にかごく自然に市民権を得てしまった感があります。
 世間のニーズに前倒しされるように浸透してきたのは世のすう勢で、もはや誰もストップを掛け辛い状況にまで、一般に広まっています。
 少し前までは「家族葬」を希望する要素に費用の面がクローズアップされていましたが、矢張り実際に執り行ってみると、葬儀社の担当者の力量が大きくものをいうようです。
 施行された家族葬の依頼者からのご報告をピックアップしてみると、異口同音に気配りに関心が集中しているようです。

 「父の希望していたシンプルな葬儀を素早く理解して下さり、同じ目線で一緒に考えてくださったおかげで、父らしい葬儀ができました」とおっしゃるのはご家族ご親族15名で1日葬をされた方でした。

 ご家族4名だけからご親戚、親しい友人まで少し広めた葬儀に切り替えた方は「葬儀は密葬でと言い続けた父の言葉は母の身体を気遣ってのこと。病院から安置所に行く途中自宅前を通って欲しい旨伝えてあった通り自宅前で暫し停車し、お祈りしてくれました。その際に足の悪い母を車に乗せ、安置所で打ち合わせを済ませた後、自宅まで送っていただいたり、故人の直筆メッセージを渡したところ、会葬お礼の文面の最後に印刷し、原本は額に入れて安置所に飾ってくれました」と故人を大切に考えてくださっている気持が伝わり、思わず新たな涙を流しましたとご報告いただきました。

 「長患いで高齢の母のこともあり、気持は整理できていました。その気持を汲み取っていただき、時には明るい笑顔で対応していただき心静かになることができました」とのご報告いただいたのは以前お父様の時、流れの中に身を任せた反省から主体的で行こうと決意された方でした。

 「葬儀社だけでなく担当の方が重要だとつくづく感じております」とご報告いただいた方からは「担当者は何も知らない私に親切丁寧に教えてくれただけではなく、判断する材料をくれたのがよかったです。出席された方にお褒めの言葉を言っていただき家族全員、大変満足しております」との由。
 

直葬は様々な顔を持っている・・・。

 昨年来からマスコミでも取り上げられ都会を中心に増えてきた直葬。
 火葬のみと言われ、通常の通夜、葬儀・告別式を省いて死後24時間を経たご遺体を、直接火葬するやり方ですが、一口に直葬と言ってもお別れの仕方は様々です。

 例えば、こちらで火葬にされ、ご遺骨で地方にお帰りになってご葬儀をされる方。
 病院から一旦ご自宅に戻り、最後の夜をご家族に見守られ過ごされる方。
 ご自宅での最期を迎え、そのままお迎えに来るまでご家族とご一緒の方。
 病院から火葬場に直行され、お別れ室や炉前であわただしく読経しお別れをされる方。
 病院から一旦葬儀社の安置所に搬送され、安置所でゆっくりお別れができる方と千差万別です。
 
 一昨年位までは特別なことのように思われていた節がありますが、テレビ・ラジオで盛んに紹介され、世間に認知され始めると瞬く間に広がり、葬儀社によってはかなりのパーセントを占めるとまで言われています。

 当センターでも直葬を望まれる方が目立ってきて、アンケートで頂いた回答の中にも、様々なご事情が伺えます。
 生後間もないお子さんをご自宅で亡くされた方は、よく分らないことばかりだったので葬儀社の担当者に相談に乗ってもらい、少しおせっかいくらいに親身になって貰ったとのこと。
 また、通夜、葬儀は青森のご実家で執り行うので、火葬のみにされた方。
 長年の介護で手元資金の余裕がなく、ネット検索で費用負担をかけずに行う為の相談窓口としてご相談された方。
 50万円のお布施代はお出しになったが、葬儀社に無駄な費用は払いたくないとおっしゃる方や特別室での火葬、大理石の骨壷にこだわった方。
 形ばかりが先行する葬儀のやり方にどうしても納得がいかず、最も身近な者だけの義理のない、静かで安らかな気持で見送りたいという思いを担当者が汲んでくれ、それを実に的確に捉えてことを運んでくれたことに感謝している方等、都会生活の縮図がそのまま映し出された形が見えてくるようです。

ご葬儀にも主婦パワーが発揮される時代がやってくる・・・。 

 右を向いても左を向いても不景気風に呑み込まれそうな中で、怖いもの知らずに突き進められる一群がいます。
 そうです。強行突破ができるのは一家の大黒柱のお母さん。
 主婦軍団です。
 最近は様々な場面に顔をのぞかせていますが、ご葬儀の分野でも主婦パワーを発揮される方が出てきています。
 ご葬儀がより儀式化される一方で、家族葬のようにご家族・ご親族のみ、親しい人たちだけの中で日常の延長上として執り行いたい方も多く、それには生活者の目を持った主婦が打って付けなのでは。

 昨年末伺った東京近郊の式場でも取り仕切っているのは、3年前まで専業主婦でしたと言うお母さん。
 以前は田んぼだった土地を遺産相続で宅地にし、跡地を斎場にと思いついたのです。
 というのも周りにはご葬儀をする場所が無く、遠方の公営斎場まで足を運んでいる現状を見ていたことから、倉庫やアパート経営よりもと考えついたのですが、それからが大変だったようです。
 いつの間にか火葬場ができるという噂が先行し、ご近所の大反対にあってしまったが3年がかりで説得し、葬儀社の方々に尋ねながら、使い勝手のよいこだわりの式場を完成させました。
 さらに建てたからには葬儀のことを知らなくてはと葬儀社に手伝いに行き、式場のみならず、いつの間にかご自身も葬儀社を立ち上げてしまわれた。
 まだまだ駆け出しですからとは言え、10年後が楽しみなパワフル母さんです。

今年のご葬儀は日にち最優先の傾向あり・・・?

 松の内もあっという間に過ぎ、お正月はずっと以前に終ってしまったかの様に見えますが、まだまだ余韻を残しているのが火葬場です。
 場所によってばらつきはありますが、暮の内に消化できなかった分、お正月にお亡くなりになられた分が尾を引いて、式場だけでなく火葬場まで1週間待ちの状態でご迷惑をお掛けしてしまいました。

 今月いっぱいまでは少し難しいかもしれないが・・・と楽観視されていた方が急変され、お亡くなりになられたが、ご遺族はお仕事の関係もあり、どうしても日にちが待てないとのこと。
 日にち最優先とはいえ、火葬場の塞がりはいかんともしがたく、ご相談に乗っていた葬儀社さんもお手上げ状態のため、今はどなたもいらっしゃらない遠く離れた故人のご自宅のある地域の葬儀社さんにバトンタッチして、なんとか事なきを得ました。
 今までご葬儀の日取りは比較的ゆるやかに組まれても大丈夫な場合が多く、むしろご予算の関係を重視されていたが、今年はご予算もさる事ながら、厳しい世の中、仕事の関係などで日程がより優先される傾向が強まるのでは・・・と予感します。
 お正月のような特殊な状況を除き、火葬場の待ち具合は心配ありませんが、早期の公営式場確保はさらに困難な状況になるのでは。

 以前関西の会社の方から東京支社の葬儀に関して首都圏ではご葬儀に3日4日とかかるのは当たり前になってきているといわれますが本当ですかと問われたことがありましたが、今年はより厳しくなるのでは・・・。

ご葬儀におけるご親戚との関係は・・・?

 最近のご相談の中で、ご親族にご高齢の方が多く、できれば通夜と告別式に2度足を運ばせるよりは1日葬で済ませたい。
 しかし、通夜もやらず夜通しお線香の火を絶やさないこともしないとなるとご親戚の方達を説得する自信が無い。
 また、長患いで半年以上留守になっている家には帰したくないが、親戚からなぜ自宅に帰せないかと問い詰められそうで心配だ、とご親族との間が気がかりなご報告を受けました。
 ご親戚の心配は身内なだけにかえって面倒で、なかなか一筋縄ではいかないようです。
 
 ここ2~3年、都会を中心にご家族・ご親族を中心とした家族葬という言葉が当たり前のように使われてきていますが、最近はより厳選され、ご家族のみでお見送りしたいとご希望されるケースも多くなってきています。
 遠方の普段余り交流の無いご親戚にはご葬儀後お知らせすることでご了承願おうという傾向のようです。

 1年ほど前に頂いたお手紙が思い出されます。
 その方も、始め故人の意思を尊重され、ご家族のみのご葬儀を希望されていましたが、当センターのホームページの「おまいりしたい人の気持ちも酌んであげることも大切のくだりがずっと頭の片隅にこびり付いて、結果、『お見舞いも拒否され(体調不安定のため)、最期のお別れもできないなんて、つらすぎる』との親戚の言葉に『どうぞ、お願いします。来てください』と言えたのが一生の悔いを残さずにすみました」。

「血縁のあるなしにかかわらず、父にお別れをしたい人だけが集まってくれ、私たちに気を使わせることなく、数々の至らなさにも目をつぶって、励まし、慰めてくれました。また、通夜の晩は遠方からの会葬者も多く、大広間に貸布団を敷きつめ、合宿所のような一晩は父が皆をより一層仲良くさせてくれた時間に思えます。翌朝バケツリレーのように次々とお布団の山が築かれたのは圧巻でした。涙も笑いもあるご葬儀でした」とのご報告をいただき、おもわず、我がことのようにうれしく感じたものでした。